HOTELS DELUXE Vol.31
ホテル連載第31回:京都・大阪の新ホテル
October 2024
全国的にホテルの開業ラッシュが続いているが、特に今年は京都と大阪に多くの有名ラグジュアリーホテルが開業した。個性豊かな5軒をピックアップ。
text yukina tokida
<バンヤンツリー・東山 京都>
辺りを囲むのは豊かな竹林。建築美が光るホテルには天然温泉や京都初となる能舞台も併設。
ロビー正面玄関の大庇。外観デザインを手がけたのは隈研吾氏。木のほのかな香りがゲストを迎える。
世界各地で個性溢れるホテルを手掛ける「バンヤン・グループ」が、創業30周年の節目に開業したのが「バンヤンツリー・東山 京都」。京都駅から車で15分ほどの東山の高台に位置し、多くの著名人に愛された「ホテルりょうぜん」の跡地に誕生した。敷地内の12メートルの高低差を生かした造りが特徴で、一部の客室からは京都の街並みを一望できる。
ここでの目玉は祇園・東山地区のインターナショナルホテルとしては初となる天然温泉。宿泊者専用大浴場の内風呂と露天風呂に加え、全52の客室のうち8室には温泉が引かれている。さらに驚くべきは京都のホテルでは初となる能舞台を備えていること。能楽をはじめとするパフォーマンスが開催される。三つの庭と竹林もあり、四季を感じながら散策できる。ダイニングではコーススタイルの割烹料理を提供し、地酒が豊富に揃うバーも併設している。
天然温泉を楽しめる最上級カテゴリーの客室「バンヤンONSENリトリート」(74㎡)。リビングエリアからも能舞台を望める。
京都のホテルでは初となる能舞台。
<シックスセンシズ 京都>
ウェルネスとサステナビリティを追求し続ける自然派ラグジュアリーリゾートのパイオニアがついに日本上陸。
中庭に面した開放的なロビー。天井は折り本がインスピレーション源。左側の壁を彩るのは京都の焼き物「楽焼」の屛風。
今年4月に待望の日本初上陸を果たした「シックスセンシズ 京都」。シックスセンシズは、自然派ラグジュアリーリゾートとして知られ、世界中に多くのファンを持つブランドだ。ウェルネスとサステナビリティに焦点を当てたサービスが特徴で、京都でもそのスタイルはしっかりと反映されている。
特にウェルネスメニューが充実しており、最先端の科学と伝統的なヒーリング手法、日本の禅文化を組み合わせた多彩なトリートメントを受けられる。スパエリアには、温浴施設や屋内プール、ジムに加え、水中ボディワークや瞑想、ヨガのための専用施設も完備している。また、プラスチックゼロに向けた取り組みも徹底されており、客室に使い捨てプラスチックを見かけることはない。サステナビリティを学ぶ施設「アースラボ」もあり苔玉や蜜蠟ラップ作りなどのさまざまなアクティビティも用意されている。
ベッドルームから豊国神社を望む「デラックス スイートガーデン」。
ウェルネス施設には男女ともにスチームサウナとドライサウナ、水風呂を完備。
<フォーシーズンズホテル大阪>
日本の伝統美と現代的なラグジュアリーを融合した畳張りの特別コンセプトフロア「玄水」とは。
「グランド畳スイート」のリビングエリア。特別コンセプトフロア「玄水」では、特注のマットレスと完璧な遮光カーテンが極上の睡眠を約束してくれる。
8月に開業した「フォーシーズンズホテル大阪」の見どころは、1フロアだけの「玄水(げんすい)」だ。他の階のエレベーターホールは鳥居を彷彿とさせる鮮やかな朱色が彩る一方で、このフロアは照明が暗く、壁も黒い神秘的な空間。客室は白の漆喰調の壁と畳敷きで、ドアを開けた瞬間に光と藺草(いぐさ)の香りに包まれる。フォーシーズンズホテルとしても初の試みとなる。
また、大都市にいながらリゾートのようにくつろげる同ホテルらしさを強く感じられるのが、充実したスパエリアだろう。ジムやプール、浴場に加え、プライベート浴室も用意されている。37階のバーや、本場仕込みの広東料理を堪能できるメインダイニング「江南春(ジャンナンチュン)」からの景色も最高だ。
海外のゲストをはじめ、すべてのゲストに大阪の銭湯文化を楽しんでもらいたいという思いから、予約制のプライベート浴室を完備。広々とした湯船で心置きなくくつろげるだろう。
<大阪ステーションホテル、オートグラフ コレクション>
初代大阪駅の歴史が息づく、駅直結の一軒。駅前広場や水飲み場、線路をモチーフにしたアートも。
客室はロの字に配置されているため、東西南北それぞれ異なる景色が楽しめる。37階のTHE SUITEと38階、そして各階のスイートに宿泊したゲストが利用できるサロンやバスエリアも備えている。
「JPタワー大阪」内の1階と7階、29階から38階に入る「大阪ステーションホテル、オートグラフコレクション」は、この地の歴史や鉄道の魅力をそこかしこに感じられるホテルだ。
29階の「STATION SQUARE(駅前広場)」は、旅人が足を休め、人々が行き交う場所をイメージしたもので、併設している水飲み場「WATER STATION」では水を無料で提供している。かつて新幹線や寝台車に備えられていた封筒型紙コップも用意されているため、懐かしさを覚えるゲストもいるだろう。さらに、鉄道関連のオブジェやダイヤグラムのアート作品が飾られているほか、客室のドアノブは電車のブレーキがモチーフになっているなど、鉄道ファンにはたまらない要素も随所に見られる。
天井高約10メートルのロビーラウンジの頭上を彩るのは、鉄道の線路や動輪をモチーフにした「レールリングアート」。
<キャノピーbyヒルトン大阪梅田>
大阪の多彩な文化をインテリアに落とし込んだペットフレンドリーな日本初上陸ホテル。
51室ある、各階の角部屋に位置する「コーナースイートルーム」(63㎡)。天蓋に描かれているのは、豊臣秀吉の馬印「千成瓢簞(せんなりびょうたん)」。自然光がたっぷり注ぎ込む開放的な空間だ。
開発が進む大阪駅のうめきたエリアに、9月6日に誕生した「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」は、日本初進出となるホテルブランドだ。館内のインテリアには大阪の多彩な文化が随所に表現されており、エントランス頭上の照明はたこ焼き器、カーペットの模様は大阪の八百八橋、オールデイダイニングのランプは串カツにインスパイアされている。館内を巡るだけでも大阪を感じられるユニークな意匠にワクワクするだろう。大阪の伝統工芸品にちなんだオブジェやアート作品も多数飾られている。
特筆すべきは、大阪府内としてはまだ珍しいペットフレンドリーなホテルであること。宿泊はもちろん、1階カフェのテラス席ではペット同伴も可能で、専用メニューも充実している。
水と緑を感じられる11階のルーフトップバー&ラウンジ「!JaJa!Bar(ジャジャバー)」では、大阪のローカルフードも楽しめる。
<本連載の記事は以下より>
Vol.28 ホテルのこだわりパン《第一回 赤坂・虎ノ門エリア》
Vol.29 ホテルのこだわりパン《第二回 大手町・日比谷エリア》