RALPH LAUREN
THE AMERICAN DESIGNER
偉大なるアメリカンヒーロー、ラルフ・ローレンのすべて
May 2024
(本記事は2015年3月24日発売号に掲載された記事です)
アメリカ人デザイナーであり、傑出した博愛家であるラルフ・ローレン。撮影場所はロンドンのスペンサー・ハウス。
ラルフ・ローレン、その知られざる顔 ラルフ・ローレンは、世界的な成功を収めたラグジュアリー・ブランドを生み出した、米国人デザイナーとして知られている。しかし、彼には、あまり知られていないもうひとつの顔がある。
彼は目立たぬところで、数々の慈善プログラムに、膨大な資金を提供してきたのだ。
なかでも、がんの治療と研究に関しては、とりわけ大きな支援を行ってきた。
ローレン自身は、これまでの数々の善行を公開したいとは思っていないようだが、その功績を考えると、彼こそまさに、“アメリカン・ヒーロー” と呼ぶにふさわしい人物だといえよう。
究極のラグジュアリーとは? 2014年6月17日、ラルフ・ローレンは、アメリカでもっとも栄誉ある勲章のひとつ、ジェームズ・スミソン・メダルを受章した。ヒラリー・クリントンは、授与の際、「ラルフはいつも未来へのビジョンを持ち、エネルギーに満ちています。彼は自らアメリカン・ドリームを実現させただけでなく、多くの人々に、夢をかなえるチャンスを与えてくれました」とスピーチした。
私たちが知っているラルフ・ローレンは、世界に名を馳せるスターだ。しかし、ヒラリーの言葉は、彼が一番大切にしているものを、実は私たちの多くがほとんど知らないということを示唆している。
彼の心の中で大きなウエイトを占めているのは“人を助けたい”という願いだ。
「ラグジュアリーといえば、人は高価なものを想像するでしょう。しかし私は違う見方をしています。多くの人にとって本当のラグジュアリーとは、モノではなく、自分の求める人生を実現することです。ですから、究極のラグジュアリーとは、教育や医療の支援によって、その可能性を人々に与えることかもしれません」
しかしローレンが、自らの博愛主義を公の場で口にすることは滅多にない。活動にスポットライトが当たるのも好まない。
「誰かを助けられるなら、私はいつでもそうするつもりです。私自身も、幸せな気分になれるからです。しかし人に慈善家と呼ばれるのは、好きではありません」
ラルフ・ローレンがん予防センターの医師、ハロルド・フリーマンはこう言う。
「ラルフは物静かな人物です。そのやり方は控えめで目立たない。彼は一歩離れたところから援助をするのです。自分の手柄を気にかけている様子は微塵もなく、常に他の人々のことを思っています」
次男であり、ローレン社のエグゼクティブバイスプレジデントを務めるデヴィッド・ローレンは、父についてこう語る。
「父が行った援助のほとんどは、公になることはないでしょう。そのなかには、悩みを抱えたスタッフや友人、自らの暮らすアパートメントのドアマンに対する、ちょっとした援助も含まれます。助けが必要な人がいて、その話に心を動かされるなら、相手が誰であるかは関係ないのです。父は、困っている人を助けるときは、無欲でなければならないと教えてくれました。そんな父を、心から誇らしく思っています」