NICOLAS CAGE

映画狂を虜にする俳優:ニコラス・ケイジ

August 2024

text nick scott
photography simon emmett
fashion direction jo grzeszczuk
Produced by Flower Avenue
issue10

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「『リービング・ラスベガス』に出るにあたって、僕はアルコール依存の見事な演技を片っ端から見た。『酒とバラの日々』のジャック・レモン、『失われた週末』のレイ・ミランド、『スター誕生』のクリス・クリストファーソン、『ミスター・アーサー』のダドリー・ムーア。彼らはひとり残らず素晴らしく、僕はそれぞれから違う何かを少しずつ学んだ。映画内のクリストファーソンは、自滅的なアルコール依存者であるにもかかわらず、いつも非常に前向きだった。ダドリー・ムーアが演じた人物の問題点は、話をするときに声量をコントロールできず、ひどく声が大きいことだった。これらはすべて作品に取り入れた要素だ。ただ、ジョン・ヒューストンの『火山のもとで』に出てくるアルバート・フィニーを見たときは……映画を見始めて2分で、彼が本当に酔っていることが伝わってきた。凄い、これはリアリティー満点だ、と感じたよ」

 ケイジは『リービング・ラスベガス』で1996年にアカデミー主演男優賞を受賞した。彼がどのように演技の迫真性を高めたかを示す手がかりは、受賞スピーチの中にあった。ケイジは監督のマイク・フィギスと共演者のエリザベス・シューへの感謝を述べた後、映画の原作小説を書いたジョン・オブライエンと、プロデューサーのアニー・スチュアートに謝意を表する合間に、トニー・ディングマンという人物の名前をちらりと挙げたのだ。ディングマンは、何らかの立場でコッポラ家のためにしばらく働いたことがある男性で、ケイジによると、当時は「大酒飲みの詩人」だったと言う。

 同映画の全編にわたり、ケイジの非公式の“演技指導者”を務めたディングマンは、マルカム・ラウリーの『活火山の下』や、チャールズ・ブコウスキーのやや難解でとりとめのない文章、ウィリアム・ホールデンの伝記といった、関連する必読書をケイジに提供した。さらにケイジに対し、“メソッド(自分の経験や感情を生かして役になり切る手法)”を新たな高みへ進化させるよう促した。「当初から、ちょっとだけ酒を飲んでみるタイミングを慎重に見計らっていた」とケイジは当時を振り返る。

『リービング・ラスベガス』でエリザベス・シューと(1996年)。

本記事は2018年3月24日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 21

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