August 2019

ELEGANTLY WASTED

“キース・リチャーズ”という神

ザ・ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズは、「世界で最もエレガントなジャンキー」と言われた。
逮捕、破局、ヘロイン、ヒーロー崇拝を経て、キース・リチャーズは生き残り、伝説になった。
text joobin bekhrad

Keith Richards / キース・リチャーズ1943年、英国生まれ。現存する「世界最高の」ロックバンド、ザ・ローリング・ストーンズのギタリスト。ヴォーカル担当のミック・ジャガーとともに、数々のヒット曲を生んだ。独特のリフを多用したギタープレイと、破天荒なライフスタイルは、多くの後進に影響を与えた。ロックンローラーの鑑ともいうべき存在である。

「5つの音と2本の弦、2本の指、そしてケツの穴1つ」

 キース・リチャーズに必要なのはこれだけだ。もっとも、強靭な肉体、ブルースが好きなクールな仲間たち、そして天賦の才能にも恵まれている。

 ヘロインがらみの逮捕に破局……。ロック界を代表するギタリストは、さまざまな試練を乗り越えてきた。世界屈指のバンドを50年以上支えてきたキース・リチャーズは、まさに「レイキッシュな男」として賞賛に値する。音楽評論家のニック・ケントは「世界で最もエレガントなジャンキー」と評した。

 そんなキースにも、シャイで優しい少年だった時代があった。ロンドン中心部から数マイル離れたケント州ダートフォードに住んでいたキース少年は、のどかな郊外での退屈な日々を、チャールズ・ディケンズの小説で紛らわせ、母親のレコードプレイヤーで、ジャズやクラシックを聴いていた。

 祖父のガスが壁に掛けていたギターに魅せられ、「手が届くようになったら弾いていい」と言われていた。背が伸びたキースはついにギターを手にし、フラメンコの定番曲『マラゲーニャ』をマスターして有頂天になっていたという。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 21
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