Monday, November 18th, 2019

全米一の人気コメディ俳優
ケヴィン・ハート
-KEVIN HART-

コメディアンからの転換

 俳優に転向したコメディアンは、ケヴィン以前にももちろんあまたいる。彼は特にエディ・マーフィに刺激を受けたという。
「コメディは俳優業に生かせると思っていたよ。舞台に立っているときはさまざまな場面に入り込んで観衆にストーリーを伝え、キャラクターを演じ、芝居をしているからね。エディ・マーフィやリチャード・プライヤー、クリス・タッカー、マーティン・ローレンスを見てもわかるように、自分のコメディを新たな次元へと高めつつ、俳優業でも成功したコメディアンは大勢いる。彼らは同じ“面白さ”を演技の中に持ち込むことができたからね」
 ケヴィンにとって、『ライド・アロング~相棒見習い~』(2014年)はこうした“新たな次元”への転換点だった。批評家の評価こそ高くなかったものの、ケヴィンが演じた気弱男子らしい自虐的なキャラクターは本当に魅力的だった。これは彼が意図的に取った手段でもある。
「自分のことを深刻に考え過ぎちゃいけない。僕は人にからかわれても構わないし、まず自分からネタにするのも嫌じゃない。言葉で伝えているのは、僕はあまり気にしない男だということ。穏健な人間であることを示す、僕なりの方法だよ」
 ケヴィンはこの作品でチャンスを摑み、映画会社は彼を中心としたコメディ映画を作ろうと考えた。そうして生まれた作品が、ウィル・フェレルとW主演した『ゲットハード/Get Hard』(2015年)だ。この作品でも批評家のレビューは寛容でなかったが、興行的には成功を収めた。
 そして翌年、彼は世界一ビッグなスター、ドウェイン・ジョンソンと『セントラル・インテリジェンス』で共演した。タイミングは両者にとって完璧だった。ジョンソンはプロレスラーとして既に有名人だったが、俳優としてはまだ一部の批評家に受け入れられていなかったからだ。しかし、
“迷”コンビの生み出す見事な力学は批評家たちをも魅了し、考えを変えることになった。ジョンソンとの関係について、ケヴィンはこう話す。
「すごく相性がいいし、それは最高の幸運。スクリーンの中でも外でも本当に馬が合うんだ。互いに多くの共通点を持っていると思う。目標を追い求めるタイプで、仕事に対する意欲が極めて高いこと。それに家族を一番大事にしていること。時間をつくるのは、子供たちとの時間を確保するため。そのためには努力が必要だ。一朝一夕に手に入るものではないからね。努力していく中で、困難を回避する方法に気づくんだ。だからこそ、世界中の大物俳優たちは、最高のレベルで物事を成し遂げられるんだと思うよ」
 このふたりの力学が再び発揮された作品が『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017年)だ。ケヴィンの役どころは、コメディの才能を発揮するのに打ってつけだった。世界の記者たちは、あまりにも名作だった1995年の1作目を愛するあまり、この映画を批判しようと手ぐすね引いて待っていたが、ケヴィンとジョンソンのエネルギッシュなかけ合いはまたしても人々を魅了し、成功を収めた。既にシリーズ第3作目となる続編も控えている(2019年12月日米同時公開予定)。
 ケヴィンが才能を発揮したプロジェクトは実写映画だけではない。サム・クックを彷彿とさせる彼の特徴的な声はちょっとしたトレードマークになっている。十分な声域もあるのでさまざまなキャラクターに適応するのだ。声優というジャンルへの進出について、彼は「思ってもみなかったもうひとつの道」と話す。
『ペット』(2016年)や『スーパーヒーロー・パンツマン』(2017年)は、そんな彼の歩みを示す最たる例だ。前者の続編『ペット2』(日本では2019年7月26日公開)で、ケヴィンはクレイジーだが愛らしいウサギ、スノーボールの声を引き続き担当した。1作目で悪役だった彼が、続編で中心的なキャラクターとなることは何の不思議もない。スノーボールは、1作目の中でも抜群に面白くて印象的な存在だったからだ。ケヴィンはこの役が自身のキャリアにもたらし得る効果に期待を寄せる。
「『トイ・ストーリー』でウッディを演じたトム・ハンクスや、『シュレック』でドンキーを演じたエディ・マーフィを考えると、スノーボールは自分にとって大きな存在になると思うんだ。“僕にとってのドンキーになるんだろうか?”と期待してしまう。俳優はそういう瞬間を待ち望むものだから」

スーツ、タイ ともに参考商品 Dolce&Gabbana
シャツ Edward Sexton
チーフ New & Lingwood
オーデマ ピゲの時計(ロイヤル オーク・トゥールビヨン・エクストラシン・オープンワーク)は本人私物。

『ペット』(2016年)でスノーボールの声優を担当。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 29
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