BIG LIGHT

俳優:スタンリー・トゥッチ
ハリウッドの寵愛を受ける才人

July 2019

photography tomo breje text tom chemberlin fashion and art direction sarah ann murray
issue10

イブニングシャツ¥52,000、ボウタイ¥19,000
イブニングジャケット、イブニングトラウザーズ ともに参考商品 すべてRalph Lauren Purple Label
時計「クラシック クロノメーター 45MM」¥400,000 Ralph Lauren
スリッポン Cifonelli
ポケットチーフ property of The Rake
眼鏡 本人私物

 特定の作品が広く人気を集めているわけでもないのに、トゥッチが映画やテレビ、舞台にたえず出演しては絶賛されているのは、彼がプロ意識を持って真摯に取り組んでいるからだろう。このことがもっともよくわかるのが『ラブリーボーン』。2002年に出版されたアリス・シーボルドの同名小説をもとに、ピーター・ジャクソン監督が夢物語ではない現実を夢のように表現した作品だ。この映画はあまり好意的な評価を受けなかった。サイケデリックで後味の悪い映画だからだ。痛ましいテーマよりも、アーティスティックな演出に重きを置いているように思えるため、残念ながら平穏な暮らしを乱す悲劇がきちんと表現されていないという意見も聞かれた。

 だがトゥッチは異彩を放っていた。脂ぎったバーコードヘアにフレディ・マーキュリー風の口ひげをつけた、ふだんの風貌とは似ても似つかない姿で、奇異なキャラクターを演じたのだ。

 ピーター・ジャクソン監督は絶妙なキャスティングに定評がある。『ラブリーボーン』が名作と呼ばれることはないだろうが、トゥッチが世界屈指の名優であることは明らかになった。アカデミー賞にノミネートされたのも当然だし、受賞を逃したのは作品のテーマのせいであって、彼のせいではないだろう。エミー賞、グラミー賞、オスカー、トニー賞のすべてにノミネートされた数少ない俳優の一人だという点も注目に値する。4つの賞をすべて獲得した者は12人しかいないのである。それにしても、トゥッチはどうやってこれほど多彩なキャリアを築き、これほど評価を得たのだろうか。

誰もが認める俳優としての才能 彼は、役作りに対するアカデミックなアプローチを謙虚に、哲学的に、知的に語る。メリル・ストリープの隣にいても、稀代の名優らしい落ち着きを漂わせ、誰にもひけをとらない。メリル・ストリープは本誌にこう話してくれた。

本記事は2016年1月23日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 08

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