July 2019

AMELIA EARHART : A SYMBOL OF NEW WOMANHOOD

新しい女性像のシンボル
アメリア・イアハート

text stuart husband

アメリア・イアハートとナビゲーターであったフレッド・ヌーナン。赤道一周飛行に挑戦中、1937年7月2日、彼らは消息を絶った。

“大空のゴースト、彼女は空に、海に飲み込まれた。彼女は空を飛びたかっただけ、まるで私のように……”

 1976年にシンガー、ジョニ・ミッチェルが歌った悲しい嘆きの曲『アメリア』のように、イアハートとヌーナンの消息は、われわれの想像をかきたてる。女性版ロビンソン・クルーソーとしての、サンゴ礁でのロマンス、魚を釣って生きながらえる日々、そして誰にも邪魔されない星空の下でのセックスなどなど……。

バイセクシャルの噂 イアハートの独特のカリスマ性は、数々の航空記録を破り始める前から、よく知られていた。彼女は旧来の女性像を変えた。澄んだ心と強い肉体から生み出される健全な好奇心によって、新しい時代の女性のシンボルとなった。 人々から「なぜ飛ぶのか?」と聞かれたときは、きまって「楽しいからよ」と答えていた。

 彼女の見た目も重要な役割を果たした。1932年に女性として初めて大西洋単独横断に成功した時までには、すでにアメリカで最も有名な女性のひとりとなっていた。彼女のイメージは、伝説的な飛行家、ピーター・リンドバーグとダブっており、一緒に扱われることが多かった。ふたりはともに痩せており、中西部出身で、真っ白な肌を持ち、魅力的な笑顔を持っていた。

 全盛期のイアハートの写真は、ちょっと浮世離れした雰囲気を持っている。強いあごのライン、すらりとした体つきによって、彼女が性別によって人生の可能性を制限されてしまうことを拒んだという事実を、そのまま写し取ったように見える。ギザギザのショートカットのせいで、彼女は思春期の少年のようだ。2009年の『アメリア 永遠の翼』のヒラリー・スワンクをはじめ、ダイアン・キートン、エイミー・アダムスなど、多くの女優がボーイッシュな彼女を演じた。

 彼女の容貌はジャンプスーツ、ジョッパーズ・パンツ(彼女はそれを“ブリークス”と呼んだ)、レースアップブーツ、白いシャツとネクタイ、ボンバージャケット、レザーコート、ヘルメット、ゴーグルなどによって、ますます中性的なものとなっていた。そして彼女の伝記によると、彼女は少なくとも空を飛ぶときには、男性物のアンダーウェアを愛用していたという。上空で用を足したくなったときに機能的だからという理由でだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 29
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