A SINGULAR WOMAN

唯一無二のトップ女優 ジュリアン・ムーア

July 2019

text tom chamberlin
photography richard phibbs
fashion direction grace gilfeather
issue10

ニット Anderson & Sheppard
トラウザーズ Brunello Cucinelli
ハット Locks & Co. Hatters

 ジュリアンはボストン大学で演技を学び、卒業後10年間は、オフブロードウェイの舞台やテレビドラマを中心に経験を積んだ。当時の自分には手厳しい。

「演じ方をわかっていなかった。楽しさは知っていましたし、ストーリーに入り込む感覚も好きでした。でも構成やセリフ、演技の大きさやトーンも理解していなかった。テレビでは、ある種のリアリティが求められるけれど、それが難しかったんです。それに声もひどかったですね。籠ったような硬い声で、実にお粗末でした」

舞台リハーサルで摑んだチャンス そんな新米の苦労を帳消しにしてくれたのが、ニューヨークの演出家アンドレ・グレゴリーとの出会いだった。1990年、グレゴリーはジュリアンをチェーホフ原作の舞台『ワーニャ伯父さん』に起用し、延々と続くリハーサルを通して刺激的な指導を行った。彼女は当時をこう振り返る。

「人生で最も深い演技経験。これほど学んだ場は他にありません。上演日未定の舞台のリハーサルに挑んだのは初めてでしたし、演じながら存在感を存分に発揮できるという奥深い経験だったのです」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 27
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