May 2019

A DUET OF WARP AND WEFT

縦糸と横糸のデュエット

by tom chamberlin
photography kim lang

セクシーなバックレスのウエストコートはシャツなしで着られる。

 フォルクス氏のスーツは、ダブル・ウエストコートの上にダブル・ジャケットをまとうスリーピースだ。

「80年代に育った私は、ピンストライプのスーツをたくさん目にしました。そのため、仕立ての悪いピンストライプ・スーツに対して恐怖症なんです。不出来なものは目を覆うばかりですが、ケント&ヘイストのような達人の手に掛かれば、生地の可能性は最大限に引き出されます」とフォルクス氏は語る。

 ケント&ヘイストは婦人服も手がけている。今回ご紹介するダブル・ジャケットは、伝統的な6つボタン2つ掛けタイプだが、ボタン位置を変えられる点がスマートで、ウエストコートも付属している。ご覧のとおり、ウエストコートはバックレスで、シャツなしで着用できる。

 女性向けにバランスを変える必要はあるものの、女性のスーツを仕立てる手法は、男性のスーツと変わらないとヘイスト氏は語る。つまり、クライアントの心理的要求は何なのかを理解しなくてはならないという。

 今回、1枚の生地は4着のスーツを生み出した。ケント氏とヘイスト氏が命を吹き込んだ生地は、至高のクラフツマンシップを体現した。私はといえば、自分に対するより大きな自信を得たように思う。やはりこれは、宗教には与えられない感覚だ。

左から:作家にして本誌寄稿者、ニック・フォルクス氏/テーラーのジョン・ケント氏/レディスのモデルを務めるライザ/テリー・ヘイスト氏/本誌の創始者、ウェイ・コー/エディターのトム・チェンバリン。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 26
1 2 3 4 5

Contents