The Rakish ART ROOM Vol.02
今買える、世界の名画 Vol.02
ワシリー・カンディンスキー
July 2020
バウハウスで教鞭をとりながら描いたカンディンスキーの代表作『コンポジションVIII』(1923年)。©Aflo
そしてこの翌年カンディンスキーは、ワイマールに新設された総合造形学校バウハウスに招聘され、教授となる。この革新的な学校はドイツ保守層の強い攻撃を受けてはいたが、彼は56歳から67歳までの約11年間、芸術家あるいは教育者として実り多い日々を送った。この頃彼が描いた最も有名な代表作が、シャープな線と幾何学的なかたちが飛び交う、《コンポジションⅧ》だ。
しかしこの最後のユートピアも、1933年、ナチス・ドイツによって閉鎖される。カンディンスキーは、67歳にしてまたもフランスへの亡命を余儀なくされ、78歳で亡くなるまでの約10年間をパリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌで過ごした。ナチス・ドイツに「退廃芸術家」の烙印を押され、自らの抽象画に対するフランス人の無理解と絶えず戦わなければならなかったカンディンスキーのパリ時代は、お世辞にも「幸福な余生」とは言い難い。しかしこの時期彼が描いた《Ligne Volontaire》や《コンポジションⅩ》は、美とエネルギーに満ちている。彼が最後まで抽象への夢と芸術への希望を捨てなかった証であろう。
晩年の作品『コンポジションX』(1939年)。©Aflo
本記事は2019年5月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 28