The Rakish ART ROOM Vol.02
今買える、世界の名画 Vol.02
ワシリー・カンディンスキー
July 2020
ロシアへの帰国直前、モスクワの特徴的な景観をひとつの円の上にダイナミックに描いた『モスクワ(赤の広場)』(1916 年)。©Aflo
ユートピアを探して その後のカンディンスキーは、本人の意志とは関係なく、芸術の楽園を追われては安住の地を探し求める旅人のようだった。1917年にモスクワに居を構えた彼は、その年に起こったロシア革命の新政権に迎え入れられ、故国の芸術政策に関与する。ロシア芸術科学アカデミーの副総裁など要職を歴任するが、“諸芸術は国家のプロパガンダに用いるべし”と大きく方針を変えた政策とカンディンスキーの抽象表現は、まったくそぐわないものとなっていた。結局1921年末、彼は妻のニーナとロシアを後にする。もしロシアに残っていたら、粛清の対象になっていた可能性を考えれば、このタイミングで出国したことは幸いであった。
本記事は2019年5月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 28