The Rakish ART ROOM Vol.02
今買える、世界の名画 Vol.02
ワシリー・カンディンスキー
July 2020
カンディンスキー初期の頃の作品、『夜』(1907 年)。©Aflo
抽象への道 1896年、当時のドイツ語圏における芸術の都ミュンヘンに赴いたカンディンスキーは、アレクセイ・ヤウレンスキーやガブリエーレ・ミュンターといった前衛美術運動の仲間たちとの活動の中で、「精神的」な「目に見えない世界の表現」を重視した抽象表現を模索する。
それ以前に描いていた中世の騎士やロシアのおとぎ話をテーマにした幻想的なテンペラ画は、実景から解放された色とかたちが響き合う美しい風景画にとって代わり、やがて聖書や神話をテーマとしたヨーロッパの伝統的な構想画を20世紀的な感覚で描く代表作「コンポジション」のシリーズが誕生した。また1911年には、盟友フランツ・マルクと芸術家グループ『青騎士』を結成し、メンバーによる企画展なども行っている。しかし1914年に勃発した第一次世界大戦により、敵国ロシア出身のカンディンスキーは、ドイツからの退去を余儀なくされ、同時に彼の幸せな「ミュンヘン時代」も終わりを告げた。
本記事は2019年5月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 28