The Rakish ART ROOM Vol.02
今買える、世界の名画 Vol.02
ワシリー・カンディンスキー
July 2020
連載第2回は、ワシリー・カンディンスキー。
一見では理解の難しい抽象芸術も、知を深めればその魅力の虜となるだろう。
Ligne Volontaire
(Spontaneous Line / 自然に起こる線)1933年末に、パリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌに居を移してから、約2年目に描かれた作品。1930年代のカンディンスキーの作品には、海洋生物のようなアメーバのような不思議な描写が見られるが、本作でもこの形態と色彩が響き合い、作品に不思議な浮遊感と神秘性を与えている。濃い青色の紙にグアッシュ/48×34.5cm/1936 年制作。¥50,000,000(税込) お問い合わせ:ザ・レイク・ジャパン info@therakejapan.com
ワシリー・カンディンスキー / Wassily Kandinsky(1866-1944)ロシア出身。「抽象絵画」の創始者のひとり。30歳にして芸術家をめざした彼は、1911 年にミュンヘンで「青騎士」を立ち上げ、ロシア革命下では初期の美術行政に携わり、1922 年から33 年にかけてバウハウスで教鞭をとった。その後ナチス・ドイツの脅威から逃れてフランスに亡命、パリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌで78 年の生涯を閉じた。©Aflo
30歳での船出 多彩なフォルムと明快な色彩が響き合い、音楽に合わせて踊っているかのような詩情溢れる抽象画で知られるワシリー・カンディンスキー(1866-1944)。「抽象絵画」の創始者のひとりとして、近代美術史の1ページに記された彼の人生は、一方で歴史に翻弄された人生でもあった。
1866年12月4日、カンディンスキーは茶の貿易を営む裕福な家庭に生まれた。モスクワ大学で法学と経済学を修め、大学講師や著述家として華々しく活躍する彼が将来芸術家になろうとは、誰も思わなかったに違いない。しかし、モスクワの展覧会でモネの《積み藁》を観たことが、カンディンスキーのその後の人生をがらりと変えた。印象派の画家モネの、光を浴びて何を描いているのか判別できないほどに解体された積み藁の描き方が、彼に衝撃を与えたのである。この常識を覆す芸術体験をきっかけに、カンディンスキーは、学者としての輝かしいキャリアを捨て、芸術家になることを決意する。このとき既に30歳。同時期の画家たちに比べれば、少々遅い船出であった。
本記事は2019年5月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 28