October 2019

THE HONORARY BRIT

英国紳士なハリウッド監督:ポール・フェイグ

photography jamie ferguson
text & creative direction tom chamberlin
Special thanks to Mark’s Club
issue10

ニュー&リングウッドのスーツ。シャツはAnto。タイはラルフ ローレン創業50周年記念にTHE RAKEとコラボしたセットのうちの1本。ブートニエールはシャルべ。カフリンクスはディーキン&フランシスのもの。

 女性に囲まれた環境で育ち、それが自然で心地よいタイプだった。自認するところによれば、異性としてではなく「友達扱いされたり、“まるで女兄弟みたい”と言われたり」したそうだ。そんなポールが、いざ女性中心の作品を作ろうと試みると、映画会社から軽くあしらわれた。あまり利益が見込めないと思われたのだ。そこで誕生した作品が『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』だ。2011年当時は、「#MeToo」運動で業界が変化する前だったが、ポールは同作のような映画は「とっくの昔に登場すべきだった」と述べる。とはいえ2本の監督作で失敗していた彼にとって、これは大きな勝負だった。自分がしくじったら女性が活躍する映画を自らの手で滅ぼしてしまうというもどかしさがあった。成功するかどうか、ハリウッド全体が固唾をのんで見守っていたのがわかったという。

 しかしご存じの通り、この作品は大成功を収めた。何も、ポールが女性の気持ちを代弁できる賢者だといっているわけではない。彼は女優や女性スタッフたちとうまく連携し、物事がうまくいかない場合に彼女たちが普通に意見を述べたり相談できるように門戸を開放してきたのだ。

 撮影現場でのポールは期待に違わぬ人物だ。人のよさは作品として結実し、チームは信頼と好意を寄せている。彼は他者が尊重されるために仕事をし、自分のスタイルを磨いてきた。あらゆる点で粋な男であり、誰もが見習い、敬意を表するべき男なのである。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 28
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