May 2022

THE FIRST AND LAST GENTLEMAN

最初で最後のジェントルマン、エディンバラ公爵フィリップ殿下

text stuart husband

颯爽とポロをプレイする殿下(1950年)。

 殿下が、エリザベス王女(当時)の父王の崩御を突然知らされたのは、30歳のとき。王女は25歳だった。側近であり友人のマイケル・パーカーは「まるで世界の半分が殿下にのしかかったかのように見えました」と振り返る。私自身も、殿下が精力的に、華麗に、そして仲間意識を持って責務を果たされてきたことを証言できるひとりだ。不満を抱き、苛立ちともどかしさを時折示すその姿に、仲間意識が垣間見えた(ある男性が、博士号を持つ妻を「私よりもずっと重要な存在です」と紹介した際、殿下は「うちも同じ問題を抱えているよ」と答えている)。

 多くの人にとってフィリップ殿下が魅力的な人物に映ったのは、心の内の葛藤ゆえだった。ドラマ『ザ・クラウン』でフィリップ殿下を演じたトビアス・メンジーズは、『ガーディアン』紙のポッドキャストでこう語っている。

「殿下の心の内では、さまざまな力がせめぎ合っていました。自分の感情を表すことにとても慎重な人。その一方で辛辣で、好奇心旺盛で、愉快な人物でした。脇役的な役割を引き受け、膨大なエネルギーと創意工夫を凝らしていました。王室もその恩恵を受けていたと僕は思います。殿下は開かれた王室の実現と神秘性の排除、王室の近代化のために尽力されました」

 女王ははっきりとこう言う。これは1997年の金婚式での言葉だ。「褒め言葉を素直に受け取れない人ですが、率直に言って、彼は私の力です。この長い年月をともに過ごしてくれました。私と彼の家族、そしてイギリスとその他の多くの国々があるのは彼のおかげであり、その力は彼が口にするよりも、あるいは私たちが知るよりも、ずっと大きいものです」。

ザ・ビートルズに授与したトロフィーをふざけて取り合う様子を楽しむ殿下。カール・アラン賞授賞式にて(1964年)。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 43
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