November 2021

DESIRE FOR LUXURY, MAYBACH

マイバッハの世界Vol.03
究極のラグジュアリーを追求して100年。そして未来へ

2021年、マイバッハは誕生100周年を迎えた。
「伝統と革新」のコンセプトはしっかりと受け継がれ、世界中の富裕層から絶大なる支持を得ている。
text shintaro watanabe

Mercedes-Maybach S680 4MATIC
(メルセデス・マイバッハ S 680 4マティック)
マイバッハ専用のグリルやバンパー、ホイールなどにより独自の雰囲気を備えている。写真の最上級モデルS 680 4MATICは、V型12気筒エンジンを搭載。他にV型8気筒エンジンのS 580 4MATIC(ISG搭載モデル*1)もラインナップされている。※写真は欧州仕様

全長×全幅×全高:5,470×1,920×1,510mm/エンジン:6L V12 ターボチャージャー付/最高出力:450kW(612PS)/最大トルク:900N・m ¥32,010,000〜 Mercedes-Benz(メルセデス・コール Tel.0120-190-610)

*1 ISGはIntegrated Starter Generatorの略称

 1921年といえば日本はまだ大正10年、自国で自動車メーカーが産声を上げるずっと前の頃、ドイツでは“ W3”と命名された1台のクルマが誕生した。当時としては革新的な技術が惜しみなく投入され、室内には贅を尽くした素材があしらわれ、高級車の原点ともいうべき仕立てであった。これがマイバッハ誕生の瞬間である。

 マイバッハは途中、自動車製造業を休止した時期もあったものの、ひとつのブランドが100年も生き永らえるというのは決して簡単なことではない。製造業ではたとえ自らが一方的に商品を連綿と作り続けたとしても、それが市場に受け入れられ、顧客の満足と評価を得なければ存続は難しいからだ。

 いっぽうで、歴史あるブランドが必ず直面するのは、移りゆく時代との共存である。技術や流行や社会や地球環境は年を追う毎に変化をし続けるので、ブランドは時代の波に乗りつつ、変えるものと変えるべきではないもの、捨てるものと捨てるべきではないものの取捨選択に迫られる。

 創業者のヴィルヘルム・マイバッハとゴットリープ・ダイムラーがお互いの才能を認め合い、いくつものメルセデス・ベンツを開発してきたという関係に端を発し、今ではメルセデスが展開するブランドのひとつとして確固たるポジションを築いていることも、マイバッハが2021年現在でも世界中の富裕層から絶大なる支持を得ている理由のひとつである。伝統を大事に守りながらも自動車の先進技術を躊躇なく採り入れる「伝統と革新」というコンセプトが、しっかりと受け継がれている証だろう。

ヴィルヘルム・マイバッハは1846年にドイツで生まれ、エンジニアとしての手腕がゴットリープ・ダイムラーの目に留まり、メルセデス35HPなどをふたりで開発した。1918年に息子とともにマイバッハ・モトーレンバウという自動車会社を設立、1921年にマイバッハW3をこの世に送り出した。

本記事は2021年11月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 43

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Contents

<本連載の過去記事は以下より>

マイバッハの世界Vol.01 次元の違う、ステイタスを

マイバッハの世界Vol.02 世紀を超えたラグジュアリーの最高峰