February 2020

THE CHAMPIONS OF HUMILITY

ターンブル&アッサーの絆

text wei koh photography sam fayed

ジェームズさんは、この事業にいつ加わられたのですか?
ジェームズ・ファイド氏(以下JF):シラキュース大学で学んだ後、2002年1月からターンブル&アッサーに常勤しています。それまでは夏休みにアルバイトをし、倉庫や工場で働きました。こうした経験は事業全体を理解するのに役立ちました。取締役に任命されたのは2007年6月です。

ニューヨークの1,670㎡に及ぶタウンハウスは、どのように誕生したのですか?
JF:1997年、マンハッタンの東57丁目42番に店舗を借りました。このエリアでは、英国ブランドばかりが軒を連ねていたからです。ホーランド&ホーランド、アスプレイ、ダンヒル……まるで英国村でしたね。
AF:その直後、ニューヨークの有名な不動産開発業者が、建物と背中合わせのスイスホテルを突然買い取ったのです。巨大プロジェクトを狙っているのは明らかでした。しばらくしてその業者から自宅に電話がかかってきました。
「57丁目を開発したいのですが、42番はそのど真ん中です。そこで提案です。私が購入した50番を、42番と交換していただけませんか? 1670㎡あり、T&Aの店舗にするならはるかにいい建物です。42番は557㎡ですから……」
JF:そんな経緯で、50番に行き着いたのです。T&Aにとって、あの不動産取引は実にラッキーでした。

ジェームズさんが取締役になったとき、ドレスシャツがビジネスの場で重要性を失いつつあると感じていましたか?
JF:私が入社した2002年は、毎日がカジュアル・フライデーのような時期でした。しかしターンブルは、気まぐれな風潮には左右されませんでした。私たちのクライアントは高級志向で、打ち合わせにはやはりスーツを着ていきたい、という方々です。年齢層は高めで、ほとんどが60代です。しかし、まだ手が出ないという方も含めて、次世代の顧客とつながることも大切だと思っています。
AF:ターンブル&アッサーの特徴は、憧れの対象であるということです。20歳や25歳のときに見て、「いつか自分も着よう」と思ってもらえるような。
JF:我々には、父親世代に連れてこられた第2世代のお客様がいますが、それだけでは不十分です。トランクショーによる物理的な形であれ、ソーシャルメディアによるバーチャルな形であれ、私たちの方からアプローチすることが大切です。若い世代が居心地のいいショップを作る必要もありますね。買い物をしながら音楽を聴いたり、ドリンクを楽しんだりできる店です。クラシックなシーアイランド・コットンのモデルに加えて、デニム製のドレスシャツなど新しいアイテムも揃えました。現在では、ご存じの通り、クラシックなスタイルを愛する20代の男性が、非常に多くなっています。

本記事は2019年3月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 27

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