February 2020

THE CHAMPIONS OF HUMILITY

ターンブル&アッサーの絆

text wei koh photography sam fayed

ジェームズさんはどのような子育てをしておられますか?
JF:私は子育てをしながら、父と息子の関係を学んでいるところです。特別で興味深い力学ですね。敬意がいかに重要かを、私は父から教わったと思います。
AF:だからといって、父親が常に正しいとは限りません。親子関係には平等な部分も必要です。
JF:互いの言葉に耳を傾けることですね。まだ新米ですが……父をすごいと思うのは、どの子供に対しても、家業に入れと強く勧めなかったことです。父が私たちに望んでいたのは、よい人間になること、どんな道でも心から打ち込むこと、そして人生を愛すること、それだけです。私自身は息子に対し、いろいろなものに触れさせるようにしています。さまざまなスポーツをして、異なる芸術分野に挑戦し、音楽を奏で、多様な本を読ませる。そのうえで選択肢を与えます。人生における選択肢は、多いほうがいい。息子はきっと、ターンブルの倉庫で土曜日にアルバイトをすることになるでしょう。ですが、そこから先は、自分の道を見つけるよう応援します。

ジェームズさん、息子さんを寄宿学校へ入れることは考えますか?
JF:いいえ。でもキャンプなら……森での暮らしを学ぶ必要がありますし。子供が友達と過ごせるように、夏になるとキャンプへ送り出すという友人もいます。ところがうちの場合は、家族が友達なのです。夏は必ずサルデーニャのような場所へ行き、家族全員で過ごしてきました。
AF:それが一番だよ(笑)。皆で一緒なのだから。
JF:若い頃はこういうことを理解していなかったかもしれませんが、父親になった今は痛いほどわかりますね。
AF:ジェームズには時々、私よりお前のほうがよい父親だと言うのです。
JF:いやいや……
AF:本当だよ。子供と遊んでいるところを見ていると、彼が本当によい父親だと思えます。おかげで私も“おじいちゃん”になれた……素晴らしいことです。

皆さんが控えめで、目立つことを避けられるのはなぜでしょう?
JF:主役はターンブル&アッサーですから。「あなたがターンブルさん? アッサーさん?」と尋ねられ、いつも「どちらでもありませんよ」と答えています。そんなときに思い出すのが、父の大好きな名言です。父さん、教えてあげてよ。
AF:ええ、その名言というのは、ハリー・S・トルーマンが述べた「誰が名誉を得るかを気にしなければ、驚くべき成果を上げられる」というものです。重要なのは個人ではなく、もり立てるブランドです。
JF:私たちは皆、家族が安定しているからこそ、どのような名誉も求めていないのだと思います。私たちにとってのご褒美は、ファミリーとの愛情なのです。

本記事は2019年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 27

1 2 3 4

Contents