April 2020

MR.VICE GUY

俳優:サム・ロックウェル
アンチヒーローを極めた男

text tom chamberlin photography david roemer
fashion direction grace gilfeather art direction rob french styling veronica perez

ポロシャツ 参考商品 John Smedley(リーミルズ エージェンシー Tel.03-5784-1238)
トラウザーズ 参考商品 Corneliani(OHGA Tel.03-6300-6820)
時計「アルパイン イーグル ラージ」自動巻き、SSケース、41mm ¥1,470,000 Chopard(ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922)

「少しして多くの“男”を演じられるようになったんだ。やや遅咲きだったと思うよ」

 1999年、ついに当たり役を獲得した。フランク・ダラボン監督の名作『グリーンマイル』で、アンチヒーローであるウィリアム・“ワイルド・ビル”・ウォートンを演じたのだ。ワイルド・ビルは凶暴で下品な死刑囚。その暗い過去は嫌悪感を喚起させるが、権力に歯向かう姿勢にはどこか茶目っ気があり、しばらく寛容にみようという気にさせる。このキャラクターの演技が、以降の冷酷で不安定で予測不能な役の土台となったに違いない。

 アンチヒーローに扮しているときでさえ観客の信頼を獲得し、それを保持するというこの能力を、ロックウェルは以降、何度も披露してゆく。そしてそれはやがて彼にオスカー像をもたらすこととなる。2017年の『スリー・ビルボード』で、彼はアカデミー賞助演男優賞を受賞するのである。

主役を食うほどの魅力『グリーンマイル』以降、ロックウェルはさまざまな作品に立て続けに出演する。いずれも挑戦的かつ革新的な製作者たちとともに取り組んだ、複雑な役ばかりだ。しかもその多くはインディペンデント映画である。公開規模が小さくあまり注目されなかった一部の作品について、彼は「少し胸が痛むこともある」と語る。

本記事は2020年1月24日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION ISSUE 32

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