Friday, September 13th, 2019

COMING TO AMERICA

ニューヨークの華麗なる亡命者たち

text nick foulkes

ボールでウサギの耳付きマスクを着けたキャンディス・バーゲン。

 こうして、新たに出現したジェットセッターたちを目の当たりにしたニューヨーカーは、ウォーホルの他にもいた。1966年に大ベストセラーとなった『冷血』(カンザス州に住む4人家族の殺人事件を題材にしたノンフィクション小説)の作者、トルーマン・カポーティである。

 同作は文壇で絶賛され、カポーティは『ニューズウィーク』の表紙を飾り、『LIFE』は過去最長の特集記事を組んだ。タイムズスクエアの巨大な電光掲示板にも『冷血』のタイトルが躍った。この大々的な広告によって売り上げが伸び、その印税は200万ドルに達した。当時の作家の収入としては、驚くべき金額である。

 この金を元手に、カポーティはヒマラヤ並みに敷居の高い、セレブリティの女主人たち(彼はスワンと呼んだ)が取り仕切る、一連の社交パーティに加わろうと試みた。彼はこう記している。

「スワンは金を湯水のように使うかもしれないが、それは問題ではない。彼女たちの才能は、金では買えないものから成り立っているのだから」

 カポーティの目から見たスワン―大西洋を優雅に飛び回り、国際的な社交界を悠然と泳ぐ女性たち―とは、ベイブ・パリー、グロリア・ギネス、リー・ラジヴィル、C・Z・ゲストたちのことだった。いずれも富豪で、エレガンスの手本となる存在で、数々のファッション誌に登場し、見事な装いを見せていた。

 スワンにふさわしい舞台を用意したいと考えたカポーティは、1966年11月に“ブラック&ホワイト ボール”と銘打った仮面舞踏会を主催した。これは旧世界の魅力と新世界のパワーが融合した、20世紀最高のパーティとして評判を呼んだ。「世界中の名士が集まった。見たこともないほど、豪華な顔ぶれだった」と『ニューヨークタイムズ』は報じている。

 グロリア・ヴァンダービルトからジャンニ・アニェッリ、フランク・シナトラ、アンディ・ウォーホル、オスカー・デ・ラ・レンタなど、富・権力・名声・美のいずれかを持つ者は、みな招待された。

 カポーティはこの舞踏会によって社交界で認められ、ついにジェットセッターの仲間入りを果たした。

ボールで客を迎えるカポーティ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 19
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