March 2021

BUG’S LIFE

どこまでも気高く、速く、
エットーレ・ブガッティ

text stuart husband

愛車のステアリングを握るエットーレ。

 彼のファミリーはミラノの街において、深い芸術的ルーツを持っていた。祖父のジョバンニは有名な建築家・彫刻家であり、父のカルロは国際的に有名な家具や宝飾品のデザイナーであった。カルロの作品には、日本とイスラムの文化を融合させた幻想的な“スローンチェア”があり、映画『エイリアン:コヴェナント』(2017年)のオープニングシーンで、マイケル・ファスベンダー演じるアンドロイドとともに小道具として使われている。また、彫刻家である弟のレンブラントは、ダンシング・エレファントと並ぶ、数々の名作を作った。

 エットーレ(1881年生まれ、エットーレ・アルコ・イシドーロ・ブガッティ)は、正式な工学教育を受けたことはなかったが、その代わりブレアのファインアートアカデミーで彫刻を学んだ。そのおかげで、彼は広大なビジョンを自由に表現することができた。後に“ル・パトロン”として知られた彼の写真を見ると、ツイードのスーツを好んで着ている。広く貴族的な額と目深に被った帽子の下の瞳が印象的だ。

「美しすぎるものはない、そして高すぎるものもない」と彼は好んで言っていたが、その両方を持つクルマを生産するという点では、ほぼ同時代を生きたエンツォ・フェラーリをも凌駕していた。これらは間違いなく、上位1%の人々のための遊び道具だった。

顧客に対しても辛辣 エットーレは17歳のとき、ミラノの自転車・三輪車メーカー、プリネッティ&ストゥッキ社で見習いとしてキャリアをスタートさせた。彼は、ド・ディオン社のエンジンを使って、世界初の自動三輪車を開発した。彼が最初にデザインしたのは“タイプ1”である(エットーレがデザインしたクルマにはすべてシリアルナンバーが付けられており、後のコレクターにとっては絶好の標的となった)。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 38

続きはIssue38にてお読みいただけます

お得な定期購読<紙版・デジタル版>はこちらより

1 2 3 4

Contents