March 2021

BUG’S LIFE

どこまでも気高く、速く、
エットーレ・ブガッティ

text stuart husband

1926年の広告より。

 馬をこよなく愛した彼は、自分の作品を“ピュール・サン”や“サラブレッド”と呼ぶのが好きだった。彼は航空機、蒸気機関車、船体、自転車、ベネチアン・ブラインド、釣り用リール、手術器具などをデザインし、生涯で1000件以上の特許を取得した。

 彼は、技術者のような厳密さと芸術家のような想像力を持って、これらの仕事に取り組んだ。その才能は、20世紀前半にブガッティの名声を築いた、レーシングカーに最もよく表されている。その伝説は今もなお、レーシングマニアからアーティストにいたるまで、崇拝され続けている。巨匠ピカソと現代の自動車評論家ジェレミー・クラークソンの両方から絶賛された企業が他にあるだろうか? 

 前者はブガッティの有名なスクエアカット・アルミニウムエンジンを“最も美しい人工物”と評し、後者はブガッティ シロン(最高速度:420km/h)に試乗して、「まるでヴェスヴィオ火山の噴火口から、溶岩の圧力によって吹き出るような感覚だ」と評した。

 エットーレがクラークソンの賛辞を聞いていたら鼻高々だっただろう。ピカソの賞賛を気に入っていたことは間違いない。

フランス・ブランプリにおけるエットーレ・ブガッティ(1925年)。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 38
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