A SHOT AT THE BIG TIME

貴族のための最後のスポーツ

May 2019

text sophia money-coutts

サンドリンガムにおけるキジの遊猟会での国王エドワード7 世と王族の方々(1909年頃)。

 一部の遊猟会で供される昼食は、エドワード7世時代の様式を見事に保っている。“イレブンジズ”も、今なお重要な伝統である。11時頃に休憩し、持参したソーセージ、スロージン、ポークパイ、ブルショット、ブラッディメアリー、チーズストローといった料理や飲み物をいただくのが通例だ。時にはスローガズム(シャンパン入りスロージン)も持参する。

 ある上流階級の友人は、「イレブンジズを食べるのが、体重を増やす一番の近道よ」と茶化す。私が2~3年前に行った遊猟会には、飛行機で渡英してきた、アメリカン・エキスプレスの重役たちが参加していた。彼らはイレブンジズの発音のコツがつかめず、毎回「イレブンジーーズ!」と言っては高笑いしていた。

 数年前にロンドンに越してきて、非常に熱心に遊猟に取り組むようになったインド人の友人サムは、うまく溶け込みたいと言う初心者にこうアドバイスする。「1日が始まって間もない段階で、自分はまるきり下手で、ここへは勉強するために来たと声高に宣言すること。このスポーツをやりたいとずっと思っていたが、ものになるかどうか非常に心配だと」

正しいスタイルを整える 服装についても、新米として注意すべき点がある。銃を持ったシャーロック・ホームズのような装いで野辺に出るのは避けたいが、皆の期待を裏切る事態もよろしくない。

 前出の映画『The Shooting Party』では、エドワード・フォックスがノーフォークジャケットを身に着けていたが、このデザインは、現在人気が復活しつつある。ウエストはベルト付きで、弾薬筒や懐炉、煙草製品などを入れられるベローズポケットがついている。ブリークスやプラスフォーズ(ツイードのニッカーボッカーズ)も主要アイテムである。

猟をするエジプトのファルーク国王(1940年頃)。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 27
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