Thursday, May 30th, 2019

A SHOT AT THE BIG TIME
貴族のための最後のスポーツ

正しいスタイルを整える
 服装についても、新米として注意すべき点がある。銃を持ったシャーロック・ホームズのような装いで野辺に出るのは避けたいが、皆の期待を裏切る事態もよろしくない。
 前出の映画『The Shooting Party』では、エドワード・フォックスがノーフォークジャケットを身に着けていたが、このデザインは、現在人気が復活しつつある。ウエストはベルト付きで、弾薬筒や懐炉、煙草製品などを入れられるベローズポケットがついている。ブリークスやプラスフォーズ(ツイードのニッカーボッカーズ)も主要アイテムである。
 アウトドア専門店ファーロウズのピーター・サント氏によると、最近はゴム製の長靴ウェリントンブーツより独マインドルのハイテクブーツの方が人気だという。彼が初心者に送るアドバイスは、そろいのツイードアイテムを同時に3点以上身に着けないことだ。「ブリークス、コート、ハットといった組み合わせは絶対に避け、2点以下にします」と語る。
 ノーサンバーランド公爵の令嬢であり、遊猟向け婦人服ブランド、ミスタミナを立ち上げたメリッサ・パーシー嬢にも聞いてみた。女性が猟場で非礼とみなされるのは?「ツイードのミニスカートですね」とミッシー。では男性の場合は?「野球帽をかぶることです」
 土曜日の夜に泊まる予定なら、タキシードと黒の蝶ネクタイも持参すべき場合がある。数年前にスコットランドで開催された週末の遊猟会では、女性が“膝丈またはそれより長い”ドレスの着用を求められた。(こんなときこそ必要な女性参政権論者たちは、一体どこにいるのか?)
 仮装服を求められる場合もある。パーティには、ぜひ参加するべきだ。今でも不参加を重大な罪とみなす地域はある。私が2~3年前に行った遊猟会の夜のテーマは“ゲーム”だった。そのため、ライチョウ、スーパーマリオのルイージ、巨大なルービックキューブの仮装をした招待客が、リビングルームに集まった。
 遊猟会の夜には廊下の忍び歩きや不品行な行為をするという誇り高き伝統もある。既婚者も未婚者も、深夜の食料貯蔵室で深い仲になりがちなのだ。すると、翌朝はベーコンエッグ越しにぎこちない視線が飛び交うことになる。

それでも遊猟は続く
 遊猟界における公爵や侯爵の割合が今でも驚くほど大きいのは確かだが、エドワード7世時代に比べると、最近の遊猟はほんの少しだけ平等主義的だ。パーディー社製の新しい銃に大金を注ぎ込むような余裕のない人々も参加できる、控えめな集まりも増えている。
 キツネ狩りが禁止され、動物保護活動家たちが次に目を付けているのは遊猟ではないかといわれている。しかし遊猟の擁護者たちは、このスポーツが英国経済にとって不可欠だと指摘する。500万エーカー近くの国土が遊猟のために管理されており、フルタイム雇用者数は7万人以上だからだ。遊猟はもうしばらくの間は存続するといって間違いないだろう。
 数年前(悲しいかな、招待客ではなく有料入場者として)王室所有の別邸サンドリンガムを歩き回っていた私は、応接室のソファの上で刺繍入りクッションを見つけた。刺繍されていたのは「Good shots never grow old, they just pick up less birds(優れた射手は決して年を取らない。拾い上げる鳥の数が減るだけだ)」という言葉だった。私が声をひそめて笑っていると、係員がそれを耳ざとく聞きつけた。「それは、ある年のクリスマスにハリー王子がエディンバラ公へお贈りになったものです」と彼は話してくれた。
 時代は変わっても、ずっと変わらないものもある。

1日の猟を終え、夕食後に足を上げてひと休みする男性たち。

『The Shooting Party』でのジェームズ・メイソンとジョン・ギールグッド(1985 年)。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 27
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