WEAVING STRAW INTO GOLD
フォックス ブラザーズこそ、一生モノである
December 2019
photography kim lang
ディテールと細かな調整を施す。
こうした特別な生地がサマセットジャケッティングだ。このコレクションは英国らしい味わいに満ちており、フォックスの精神的(かつ地理的)な故郷であるサマセットをモチーフとしている。見たところツイードのようだが、手触りは贅沢で柔らかい。ダグラス氏は次のように語る。
「エクスムアとクウォントック丘陵の散策をイメージしたサマセットジャケッティングは、色を重視し、今日のメンズウェアに色彩を取り戻すことを目的としています。近年、ますます多くの方がビスポークに目を向けていますが、用途の広いジャケットをご希望のお客様が増えています。サマセットジャケッティングはドレスアップにもカジュアルにも向いているため、日本製のセルビッジジーンズやコーデュロイとも相性抜群ですし、グレイのフランネルとも調和します。色合いと柄は伝統を踏まえたものになっていますが、現代的で派手過ぎません。フォックスのデザイナーたちは、伝統的な柄を大切にしつつも色を落ち着かせる能力を持っています。その配色は、タウンにもカントリーにも似合うでしょう」
今回選んだ生地は、13分の12オンスのミディアムグレイのウインドウ・ペーン柄ジャケット地で、ロイヤルブルーのチェック入りだ。
次に向かうのはロンドンのサックヴィルストリートにあるケント・ヘイスト&ラクターだ。今回のデザインは、ダブルブレステッド、パッチポケット、後ろ身頃のハーフベルトという、ヘイスト氏が昨年私に仕立ててくれた品に近いものだ。ハーフベルトは、不必要ではあるが結構スマートではないかと個人的に気に入っているキザなディテールである。
ジャケット全体に大きな違いをもたらしたのは、ラペルの小さな変更点だった。以前の初期仕様は、真っ直ぐな4.5インチのラペルだ。ヘイスト氏によれば、柔らかく包み込んでくれるメリノウールは、カシミアとよく似た反応を示す素材だという。今回は、そんな表情が引き立つように、ラペルをより膨らみのある形状にすることで、ラペルが小粋にすらりと垂れて胸を覆うようなデザインとなった。
テリー・ヘイスト氏のスタイルに馴染みの薄い方のためにお話しすると、彼はこれまでのキャリアにおいて、アンダーソン&シェパードの柔らかい仕立て方、ハンツマンのかっちりした伝統的な作り、トミー・ナッターの華麗なスタイルをすべて会得してきた。
卓越したファッショニスタとしても知られるフォックス ブラザーズ社のダグラス・コルドー氏。
フィッティング段階のハーフベルトは、縦ではなく横の方向に柄を合わせている。