Through the looking glass
ロスチャイルド家のパーティへようこそ
June 2019
リチャード・バートンとウォーレン・ベイティと肩を並べるマリー・エレーヌ。1960年。
そして時代は変わった 1980年代は、フランソワ・ミッテラン大統領によるフランスの銀行国営化で幕を開けた。手軽に満足感を得られることがもてはやされるようになり、ロスチャイルド流の仰々しいやり方は、突如として時代にそぐわなくなった。
ギーはニューヨークに移住することになり、マリー・エレーヌは、病気で衰弱していたものの、アッパーイーストサイドのアパートのリノベーションに取り組んだ。彼女にとってこれが、大改装の最後の作品となった。
「二度とないでしょう。もう時代が違うから」と、彼女はニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで悲しげに語った。亡くなる4年前のことである。
「パーティを開くって、健康的なことだと思わない? でももはや、人々は着飾る術を知らない。それを思うと胸が痛くなる。センスの良さや事物の美しさなどはひとつもなくなってしまった。あるのは、人々の低俗な本能を満たすものだけ」
ロスチャイルド家のパーティについて、アレクシス・ド・レデは語っている。
「それはマジックみたいなものだった」
現代のメット・ボールやアカデミー授賞式のアフターパーティは、ビジネスやプロモーションがメインである。それに比べると、ロスチャイルド家による夢のような催しは、すべての参加者にとって、イマジネーションを引き出し、自らの可能性を広げる場であった。
夫人に先立たれた10年後、男爵はパリにて98歳で他界した。彼の自伝『Whims of Fortune』の献辞に、夫人の華麗なる人生を総括した言葉がある。
「マリー・エレーヌに捧ぐ。貴方がいなければ、すべてはただ“あるがままの状態”でしかなかっただろう」と。
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