THERE WAS THE POPE AND THEN THERE WAS ENZO'
【フェラーリ創設者の物語】ローマ法王がいて、そしてエンツォがいた
April 2024
イタリア・グランプリでのエンツォ・フェラーリ(1958年)。
エンツォは「私が人生において興味があるのは、クルマを疾走させることだけだ」と言った。そんな態度は、彼の人気に拍車をかけた。エンツォの伝記を執筆したルカ・ダル・モンテ氏は語る。
「彼は神格化されていました。カーレースのみならず、もはや国家の宝だったのです。イタリアにはローマ法王がいて、そしてエンツォがいました」
エンツォは1898年2月にモデナで生まれた。飛行機やエレベーターを病的なほど恐れた彼は、90年の生涯を通してモデナからほとんど出なかった。彼の父は小さな鋳造業を営んでおり、幼いエンツォは仕事場のカンカンという音を聞きながら育ったが、トラウマとなる悲劇に見舞われた。彼の父と兄ディーノが、空軍での軍務中に、ともに命を落としたのだ。
1908年にチルクイート・ディ・ボローニャというカーレースへ行き、コースを走り回るおんぼろマシンを眺めたエンツォは、オペラ歌手かスポーツ記者になるという幼少期の考えを捨てた。高等教育など受けるつもりのなかった彼は、全エネルギーをレースに注ぎ込むことにした。