The Rakish ART ROOM Vol.12
貴殿も世界の名画オーナーに!
ジャスパー・ジョーンズ
January 2021
cooperation mizoe art gallery
友人が開いたパリのワークショップでリトグラフに取り組むジャスパー・ジョーンズ(1978年)。©Aflo
当時彼が手がけた「標的」のシリーズは、画面いっぱいに黄色と濃紺の大きな標的が描かれ、その上の間仕切りには、手、足、乳首、性器など人間の人体の一部が収められているというものだった。なかでも1955年、25歳のときにジョーンズが制作した《4つの顔のある標的》は、上部の4つの仕切りにそれぞれ人間の鼻から口にかけての部分をかたどった石膏がはまっているというもので、1958年には『アート・ニューズ』誌の表紙を飾り、その後ニューヨーク近代美術館に買い上げられた。
1979年に、インタリオ(凹版技法)とよばれる版画の技法で制作された右ページの《4つの顔のある標的》もまた、画面いっぱいに標的が描かれた作品である。ただし、その上の4つの仕切りには1955年の顔の石膏像を文字に変換し、反転した「FACE」の文字が並ぶ。自らの代表作を、作品の持つ意味を損なうことなく、二次元の版画作品にうまく落とし込んだこの作品には、立体から平面になっても、ネオ・ダダ、そしてポップ・アートの先駆者といわれるジョーンズのスピリットが、変わることなく表現されている。
ジャスパー・ジョーンズと彼の盟友ロバート・ラウシェンバーグは、戦後のアメリカを代表するネオ・ダダの芸術家であり、なおかつポップ・アートの先駆者ともいわれている。だが現代美術に精通していない限り、彼らの名を聞いてピンとくる人は少ないだろう。
ロンドンのサザビーズオークションでのプレスプレビューに展示された、1983年制作の《Flag》(2014年10月撮影)。約1カ月後、彼の作品としては史上最高の3600万ドル(当時のレートで約41億6000万円)という金額で落札された。©Aflo
本記事は2021年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 38