The Rakish ART ROOM Vol.11
貴殿も世界の名画オーナーに!
フェルナン・レジェ
November 2020
パリのアトリエでのレジェ(1948年)。1945年、第二次世界大戦後、亡命先のアメリカからフランスに帰国したレジェ。以後彼は、絵画はもちろん、ステンドグラスやモザイク画のデザインなど、公共芸術の分野でも活躍した。©Aflo
さらに言えば、やがて植物に覆われていく機械の姿は、第一次世界大戦の野戦や塹壕の中で経験した、さまざまな死の恐怖を、レジェに思い起こさせたのかもしれない。一方で、全体的にみなぎるレジェ特有のエネルギーとカラフルな色彩からは、うち捨てられた車輪や廃材でさえも花々や蝶と戯れているような、どこか陽気な印象を受けるのだ。
南フランス、アルプ・マリティーム県にある小さな村ビオット。その山と海をのぞむ小高い丘の上に、国立フェルナン・レジェ美術館は建っている。
陶器の村としての伝統を持つビオットは、晩年、陶器を使った大規模な作品を数多く手がけたレジェが愛した土地である。アトリエを構えるための土地も購入していたが、その直後に亡くなってしまったため、妻のナディアが残された土地にレジェの美術館を建てることを発案。新しい夫ジョルジュ・ボーキエも尽力して、1960年に、レジェの美術館が開館した。
太陽の降りそそぐ緑の丘を上っていくと、そこに見えてくるのは、美術館の正面を飾る、約400平方メートルにも及ぶ巨大なレリーフ。レジェがドイツのハノーヴァー競技場のために制作した壁画のデザインをもとにしたもので、ボールに向かって伸ばされた手や、自転車をかつぐ人など、スポーツにまつわるモチーフが、カラフルな色面の中にあしらわれている。南仏の強烈な光に輝くこの巨大レリーフのある美術館は、小さなビオット村の大きなアクセントであり、オープン当初から観光の目玉となっている。
本記事は2020年11月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 37