Friday, February 5th, 2021

What is NEW LUXURY? vol.02

キーパーソンに訊いた、これからの
“ニューラグジュアリー”とは? vol.02

text & direction yoshimi hasegawa
photography daisuke akita

KEY PERSON 02
鴨志田康人氏
スピリチュアルから読み解く新しい豊かさ

Kamoshita Yasuto / 鴨志田康人東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、ビームスに入社。1989年に同社を退社し、ユナイテッドアローズ創業に参画。2007年「Camoshita UNITED ARROWS」を立ち上げ、2013年日本人初のピッティ・イマージネ・ウオモ賞を受賞。2019年からポール・スチュアートの日本におけるディレクターに就任。正統派のクラシックを現代的に着こなすウェルドレッサーとして世界的に知られている。

ムゼラ・デンベックによるス・ミズーラのスーツは、ヴィンテージのベージュカラーのウールギャバジンを選んだ。あえて4つボタンのダブルブレステッド・スーツに仕立ててもらうことにより、鴨志田氏のエッセンスが詰め込まれたスタイルに仕上っている。

 鴨志田康人氏が思うニューラグジュアリーとは何か。答えは実に明確だ。

「20世紀をマテリアルワールドというなら、21世紀はいわばスピリチュアルワールド。新しいラグジュアリーのヒントはそこにあります。今まで物質主義によるラグジュアリーがもてはやされてきましたが、本来ラグジュアリーはそれとは違うものだと思います。誰にでも気軽に手に入るものではなく、あえて時間をかけて手に入れるもの。一見さんが簡単に買えるものではなかった。これは貴族とか、そんな遠い人の話ではなくて、本来は人のつてを辿って、信頼を得て、購入できるもの。ポジティブな意味でラグジュアリーはもっと閉ざされた世界のものであっていいと思っています」

 自らを高揚させるラグジュアリーなアイテムとしてこの日着用してくれたのが、ミラノの知る人ぞ知る老舗サルトリア、ムゼラ・デンベックによるス・ミズーラ(ビスポーク)のスーツだ。

「ス・ミズーラは本当の意味でラグジュアリーのひとつ。時間もかかるし、ある程度学んでから、限られた者だけが注文できる。時間と手間をかけ、信頼関係を築いた上で作られるスーツはサスティナビリティという観点からも、大切に一生着続けられるものと繋がる。これからの21世紀の豊かさにふさわしいと思います」

 ライフスタイル全般が大きく変化した今、行き過ぎたグローバル化や情報化社会の弊害も強く感じるようになった。

「新しいものを求め過ぎていたし、多くを求めすぎていたかもしれない。自分のリズムを超えて無理していた部分もありました。ハッピーなことは身近にあると多くの人が再確認しているでしょう」

 身近な幸福という点では趣味のゴルフを以前より楽しむ時間ができたことをあげる。自らゴルフクラブを担いで回る欧米スタイルのゴルフ場が増えたこともニューノーマルの恩恵のひとつ。お気に入りのキャリー用ゴルフバッグの活躍する機会が増えたと笑う。

愛用のゴルフバッグはタイガー・ウッズが学生時代に愛用していたアメリカのゴルフ専業メーカー、ジョーンズのもの。

 果たしてニューノーマルといわれるライフスタイルが定着したとき、スーツは必要なくなるのだろうか。

「確かに、スーツは今までの社会的な制服としての役割を終えようとしています。そうなると、本来の自分が好きな、格好つけたい、ドレスアップするためのスーツやジャケットが残る。今までは職業柄、どうしてもトレンドや時代感を意識していましたが、今はもっと反逆的にマイスタイルを追求してもいいと思う。スーツを着る人が減れば減るほど、自分は天邪鬼だから、逆に楽しい。自分はスーツをずっと着続けたいし、これほど気持ちをあげてくれる服は他にありません」

 一方で、ニューノーマルになってから人と会うことの大事さを痛感している。

「本来なら今頃はパリやミラノに行っているはず。さりげないフィレンツェやミラノの日常がものすごく恋しい。SNSからは生きた言葉は作るのが難しいし、オンラインでのやりとりには物足りなさを感じる。社会的な意味で人らしくいられるのは信頼関係の上に成り立った人間関係。人と会うコミュニケーションから発見するものは代え難いものだからです」

シャツはシャルベ、タイはポール・スチュアートのコレクションより。

ヴィンテージのオーデマ ピゲは薄く、クラシックな佇まい。グレイのクロコダイルのベルトはベージュカラーのスーツとの相性が絶妙なコンビネーションを生む。

靴はミラノのリヴォルタのパターンオーダー。クラシックなミラネーゼのラスト、軍靴の伝統を受け継ぐトウシェイプの丸みが気に入っている。英国製スエードにはない赤味の強いブラウンカラーはイタリアならでは。

本記事は2020年11月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 37

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