The Rakish ART ROOM Vol.07
今買える、世界の名画 Vol.07
クロード・モネ
July 2020
それは彼の最初の有名な連作《積みわら》の、序章ともいえる作品だった。
クロード・モネ/Claude Monet(1840-1926)ピエール=オーギュスト・ルノワールと並ぶ印象派の巨匠。40代になるまでは印象派の活動に邁進するが、1882年の第7回印象派展を最後に印象派とは距離を置き、さらなる表現を探求。ジヴェルニー移住後、「積みわら」や「ルーアン大聖堂」などの連作で名声を得た。1893年、睡蓮の池を中心とした「水の庭」を造ってからは、池に浮かぶ睡蓮や光を反映する水の表情を描くことに没頭し、200点以上もの《睡蓮》の連作を描いた。
刻々と変わる自然の光をキャンバスに捉えることに生涯を捧げたクロード・モネ。青空を覆う白い雲が積みわらのある草原に影を落とし、奥にはポプラがのびやかにそびえる《牧草地、曇り空》は、戸外の光を描き続けたモネの典型的な作品だ。
描かれているのは、この年にモネが購入したジヴェルニーの家の近く、レ・ゼサールの平野の風景。春には白いひな菊が、夏には赤い芥子の花が咲く草原をことのほか愛したモネは、開花の季節ごとにここを描いた。
モネの家からほど近い平野を描いた本作は、同じモチーフを同視点から別の光のなかに表現した4点の連作のうちの1点。その直後から始まるモネの数々の連作の先駆けともいうべき作品だ。花畑の奥に見えるポプラの木は、代表的な連作「ポプラ並木」の森の一部。モネが「ポプラ並木」の連作に着手したとき、業者がポプラを伐採しようとしたために、モネはこの並木を買い取ったという話が残る。キャンバスに油彩、60×100cm、1890年制作。 お問い合わせ:ザ・レイク・ジャパン info@therakejapan.com
ジヴェルニーでのモネの日課はこうである。まず朝の5時頃起きて、天気をチェック。雨が降っていればベッドに戻り、晴れていれば朝食をとる。灰色がかった分厚いジャケットを羽織り、いつものベレー帽をかぶったら、絵の具と何枚かのキャンバスを古い手押し車に放り込み、助手兼モデルを務めてくれる義理の娘ブランシュと連れだって、その日の写生現場に向かうのだった。
《牧草地、曇り空》が生まれたのは、モネが巨匠への階段を上り始めた頃である。印象派のリーダー的存在だったモネは、1874年より第8回展まで続いた「印象派展」に断続的に参加していたが、1882年の第7回展を最後に、その活動と距離を置く。そして貧しさのなかジヴェルニーに居を構え、さらなる表現を求めて、英仏海峡に臨む北から太陽の光が降りそそぐ南まで、フランス各地を写生して回った。
本記事は2020年3月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 33