October 2018

THE HERMÈS EFFECT

エルメスのシルク王国へようこそ

text benedict browne
photography kim lang

スクリーンから余分なメッシュを取り除くジャン・ノエル氏。

 部門には14人のデザイナーがおり、彼らのデザインが承認されると、製版チームがコンピューターを使ってトレースし、色ごとに分割する作業を行う。これには高度なテクニックと多くの時間が必要だ。30色で構成されたデザインの製版にかかる時間は、1色ごとに専用のスクリーンが必要となるため、400~600時間にのぼる。メンズ向けスカーフの色数は、レディス向けほどは多くないにもかかわらずだ。

「デザインの良し悪しについての判断は、人によって異なりますから、難しいですね。しかも、美しいデザインのスカーフであっても、発色がよくなければ、まったく売れないこともあるのです。複雑で手の込んだデザインを、鮮やかな色彩で仕上げることが大切なのです」

 製版が完了すると、スチール製の網の上に張ったポリエステル製メッシュにデザインを転写し、スクリーンを作成する。ここで最も重要なのは、スクリーン全体の張り具合を均一にすることだ。30年以上にわたって、この技を磨き続けている職人もいる。

 次に、紫外線のもとでスクリーンのデザイン部分に感光性のゼラチンを吹き付け、インクがその部分を通過しないよう処理する。その後、訓練を積んだベテランの目で、スクリーンに欠陥がないかをチェックする。印刷時には、ひとつの小さな不備が工程全体に影響を及ぼすケースがあるため、検査は綿密に行われる。

 チェック済みのスクリーンは、色彩設計と印刷を担当するアトリエへと運ばれる。近代的なこのアトリエは、長さ約100メートルに及ぶ複数の印刷台を備えている。

スカーフの縁かがりを実演する縫製職人。

印刷されたシルクタイの形を整える職人。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 22
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