October 2018

THE HERMÈS EFFECT

エルメスのシルク王国へようこそ

text benedict browne
photography kim lang

完成した印刷済みシルクの見本。真に重要なのは発色である。

 エルメスのスカーフの仕上げには、縁を丸めてかがり縫いする“ルロタージュ”という高度な技法が使われている。この技法では、とりわけ角の処理が難しい。熟練した縫製職人たちは、巧みな技で縁を固定する。

 ドレスコードがよりカジュアルに変化しつつある今、ゴワノー氏はスカーフを“新しいネクタイ”と呼ぶ。

「スカーフは実用的なアイテムです。暖かいし、手軽に装いを変えられます。外すのも簡単です。基本的にはカジュアルですが、結び方によってはフォーマルな雰囲気も出せます」

 男性がかつてないほどスカーフを購入しているという事実が、このことを物語っている。

 エルメスのシルクアイテムがもたらす官能的な風合いの前には、その値札も霞んで見える。そこには、過去の時代や場所を鮮やかに思い起こさせる力がある。

 エルメスは、何千もの人で構成された巨大な車輪だ。リヨンで出会ったさまざまな職人の数も、きっと100名は下らない。そのひとりひとりが必要不可欠な存在なのだ。エルメスが180年を経てもファミリー企業であるという事実は、他にはない“誠実さ”の存在を感じさせる。そしてその精神を、この偉大なメゾンのために働くすべての人々が、体現しているのだ。

シルク印刷途中の印刷機。

エルメスのシルクのプリントタイと織りタイ。左から、トランプ柄、チェス柄、ハウンズトゥース&ストライプ、サッカーゲーム柄。この発色のよさこそ、エルメスの真骨頂だ。小剣の裏には、チェスボード、びっくり箱など、ユーモアあふれる意匠が隠されている。シルクの王、エルメスを代表するアイテムだ。すべてシルク100% 各¥24,000 all by Hermès(エルメスジャポン Tel.03-3569-3300)

本記事は2018年5月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 22

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