The 10 MOST Rakish JAPANESE SHOMAKERS: IL QUADRIFOGLIO
イル クアドリフォリオ:個性革を自在に操る、革の魔術師
July 2021
イタリアから仕入れた珍しい革の数々が、それらにさらなる彩を生んでいる。
photography jun udagawa
左:ホーウィン社の型押し
ホースレザーを使用イタリアから仕入れたホーウィン社の型押しホースレザーを使用したスリッポン。サドルが後ろに流れた個性的なデザインは、正面や横から見たらときにとてもエレガントに映る。久内氏のクリエーションは、限りなくイタリア的だ。シューツリー込みで¥300,000(ビスポークはシューツリー込みで¥300,000~で、納期は約12 ~14カ月)
右:波状の模様が美しい
アザラシ革のスリッポン波状の美しい模様が特徴のアザラシの革を使用したタッセルローファー。模様の向きを斜めに使用していることで、さらに独特の表情を生み出している。ノーズは無理に長くはしていないが、ヒールカップがコンパクトで、ウエストも大胆にシェイプされているので、とてもエレガントな足元を築いてくれる。シューツリー込みで¥360,000
下:パイピングがユニークな
クロコダイルのコンビクロコダイルと伊ブリッジ社のカーフによる3アイレットの外羽根キャップトウ。このボルドーの色合いもイタリアのビスポークシューメーカーが好むもの。こだわっているのは、一文字のラインをクロコダイルのパイピングで仕上げている点だ。こういうさりげない遊びを作れるのも、久内氏の魅力である。シューツリー込みで¥380,000
人生を謳歌している靴職人を“イタリア式”と呼んでいる。長年いろいろな職人を見てきた経験から個人的見解を言わせてもらうと、イタリア式の職人は、若ければ若いほど伸びしろが大きい。職人が作る靴にはその人の人生が何かしらの形で必ず表れる。美しいもの、素晴らしいものに触れ、感動すると、心にゆとりが生まれ、感性が磨かれ、創造力が豊かになり、それが無意識のうちに自身の靴作りに表現の一手段として反映されるからだ。
久内淳史氏のことはイタリアでの修業から帰国してすぐ、2012年のデビュー時から見てきているが、超イタリア式。当時の彼は今ほどの確かな腕はなく粗削りな一方で、自由でスケールの大きさを感じさせる靴を作っていて、将来の大きな可能性を感じた。それは彼の絶対的な長所であり、磨いていけば、技術は必ずあとからついてくると思ったからだ。実際、腕はメキメキと上達した。今では、あふれる創造力をきれいにまとめる術も身につけた。経験を積んでいく中でブラッシュアップされた個性が、彼の靴をさらに魅力的なものにしたのだ。
氏の仕事に華を添えるのは、イタリアを中心に仕入れているこだわりの個性的な革たち。バッファロー、エレファント、型押しの馬革ほか、さまざまな色・素材感のものがある。デザインと革の組み合わせを久内氏と考えるのは、ここでオーダーする愉悦だ。
昨年、自身の立派な工房を新神戸駅前に構えた。美しい靴を作るために心地よい空間で仕事をしたかったから、テラコッタの床や壁の色など大好きなイタリアの薫りがする内装に徹底してこだわった。
「欲張りなのかもしれませんが、靴作りも本気で楽しみたいし、誰よりも人生を楽しみたい。このふたつの面でいちばんの職人であり続けたいんです」
いちばんの靴を作りたいとは言わなかった。常に楽しく生きていれば、自分の靴がいちばん輝いた存在になると、彼自身がわかっているからだ。
工房の壁にはイタリアから直接仕入れた、ほかではななかなか見られない、個性的な表情をした革がズラリと並んでいる。こういった革でオーダーできるのが、イル クアドリフォリオでオーダーする愉悦だ。イル クアドリフォリオの遊び心あるデザインとの相性も非常によい。ちなみに久内氏は東京では青山のシャロンで定期的にオーダー会を開いており、トランクショーの際には同店でもこれらの革を使ってオーダーできる。
久内 淳史きゅうない あつし。1979年、兵庫県生まれ。2006年、友人3名と神戸に工房を構えるも、2007年にフィレンツェに渡る。ロベルト・ウゴリーニ氏のもとで4年間修業を積み、帰国。2012 年、イル クアドリフォリオを始動。昨年、自身の工房を新神戸の駅前に構えた。底付け作業中の写真より、ドゥカティと一緒のこちらが彼らしくていい。
イル クアドリフォリオ兵庫県神戸市中央区加納町2-13-16
TEL.078-587-2050
不定休 www.quadrifoglio-kobe.com
本記事は2018年9月22日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 24