July 2021

The 10 MOST Rakish JAPANESE SHOMAKERS: CORNO BLU

コルノ ブルゥ:完成されたベースラストから生まれる安心のビスポーク

完成度の高いプレタポルテのラストを、ビスポークのベースラストにも用いる。
ビスポークでも大きくいじる必要がなく、皆に美しいフォルムの靴を提供している。
text yuko fujita
photography jun udagawa

コルノ ブルゥでは、ビスポークにおいてもプレタポルテと同じベースラストを使用している。ウエストのシェイプやウェルトを見れば作りの差はよくわかるが、上から見ただけでは、フォルムの違いはほとんどわからない。左:グッドイヤーウェルテッドによるMTO のフルブローグ¥75,000 中:手吊り込みによる九分仕立てのフルブローグ¥150,000 右:フルハンドソーンのビスポークは¥280,000~で、納期は約8カ月~。僅かの修正で収まる完成度の高いラスト。

 20年近く前のことだが、前職は都市計画コンサルタントだった。論理的で物事を計画的に考え、数字にも強い清角豊氏が前職を辞して目指した先は、1999年のフィレンツェ。鞄職人として修業を始め、2001年、ロベルト・ウゴリーニ氏に弟子入りし2年間学んだ。イタリアが今よりもっとイタリアだったあの時代、受け入れられないことも多かったろうが、街自体が世界遺産であるフィレンツェで、美的感覚が磨かれたのは確かだろう。

 ただし、今日の清角氏の作品を見るに、イタリア的クリエイティビティを100%で表現するのでなく、自身の経験とそこから導き出された彼の中での回答とを融合させ、相当にブラッシュアップさせている。決して感性任せにはしていない。アッパーのウォールのエッジも立てすぎることなく、かといって丸いわけでもなく、中庸のようでいて中庸でない独特の塩梅でまとめており、これがなんとも美しいのである。清角氏のビスポークでは、このデザインをそのままのイメージで堪能できる。完成品が想像とは違った、ということは、彼の靴に限ってはないのである。

 かつてラスト修正が可能なパターンオーダーを展開していたときに、結構な数の足型データと経験を積むことができたという。そのデータをもとにひとりで開発・改良を重ね、生み出したのが、今抜群の人気を誇っている既製靴だ。上の3足は左が工場製グッドイヤー、中央が手吊り込みによる九分仕立てのグッドイヤー、右がハンドソーンのビスポークになるのだが、既製もビスポークも同じラストを使用している。相当な自信作で、ビスポークにおいても、ほとんどの人は僅かな修正をするのみでよく、完成品がイメージから外れることはまずないという。

3足ともビスポーク。デザインはオーセンティックだが、切り替えの有機的なラインとサイドウォールの独特のラインが大変美しい。スリッポンは清角氏にしては珍しい、イタリアのテイストが色濃く出たモデルとなっている。通常は断っていることが多い一足目のスリッポンオーダーも、コルノ ブルゥでは受け付けている。

ダブルモンクのビスポークシューズ。バランスのよさに徹底してこだわっており、履くと大変美しいまとまりを見せてくれる。ビスポークは¥280,000~。

プレタポルテで開発中のサイドゴアブーツ。これをプレタポルテでラインナップできれば、そのイメージでビスポークもできるようになるわけだ。モデルは異なるが、プレタポルテはイーサン・ニュートン氏のショップ、ブライスランズでも展開している。プレタポルテは¥64,000~。

清角 豊せいがく ゆたか。1970年広島県生まれ。靴職人を目指す前は都市計画コンサルタントだったという異色の経歴の持ち主。1999年にイタリアのフィレンツェに渡り、2001年からはスピーゴラの鈴木幸次氏と入れ違いでロベルト・ウゴリーニ氏に師事。2003年に帰国後、自身のビスポーク靴工房を福岡市内にオープンする。清角氏のプレタポルテは原宿のブライスランズでも展開している。

コルノ ブルゥ福岡県福岡市中央区桜坂1-8-12
TEL.092-725-6740
(休)日曜 www.cornoblu.info

本記事は2018年9月22日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 24

Contents

<本連載の過去記事は以下より>

世界を虜にするニッポンの 美しい靴ベスト10

イーサン・ニュートン×福田洋平 座談会

ウェルドレッサーたちもオーダーしているニッポンのビスポーク靴

スピーゴラ:世界一美しいクロコダイルのビスポークシューズ

ヨウヘイ フクダ:ミリ単位の美意識が生む完璧なプロポーション

マーキス シューメーカー:1930~40年代の英国ビスポークの靴作りを追求

イル クアドリフォリオ:個性革を自在に操る、革の魔術師

アン:ブロックから削り出すラストメイキングの奇才

セイジ・マッカーシー:日米ハーフの元エリートによる超絶クールなビスポーク靴

ユウキ・シラハマ ボティエ:日・伊・仏が融け合った現代的なビスポーク

タイ・シューメーカー:スラッとしていてグラマラス。女性のような色気のビスポーク

コウジ エンドウ ボティエ:フランス仕込みのノルヴェジェーゼで世界を魅了