Sunday, July 11th, 2021

The 10 MOST Rakish JAPANESE SHOMAKERS: MARQUESS SHOEMAKER

マーキス シューメーカー:1930~40年代の英国ビスポークの靴作りを追求

どこまでもストイックに理想の靴を追い求める。
それは、1930~40年代のイギリスの手製靴。
川口昭司氏は、彼が人生の中で見た最高の一足に、靴職人としてどこまでも近づこうとしている。
text yuko fujita
photography jun udagawa

完全な調和とはこのことをいうのだろう。無理のない設計で足をスマートに見せるラスト、切り替えのバランス、すべてが自然体で控えめで、一切の無駄がない。ちなみに奥の靴は川口氏が履いているものだ。ビスポークの納期は約1年半~で、¥318,000~、シューツリー¥28,000。ただ、川口氏が目指す靴作りは、見た目の美しさだけではなく、もっと深いところにある。

 今日、クラシックの演奏家たちがショパンの名曲を各々のスタイルで奏でるように、川口昭司氏もまた、現代の感覚で英国の1930~40年代のビスポークシューズのスタイルを再現しようとしている。

 氏が理想とするハンドソーンウェルテッドのヴィンテージシューズがある(下の写真)。1940年代頃に作られた靴とのことだが、デザインバランスの美しさもさることながら、これだけ履き込まれてボロボロになりながらも、履き口の歪み、アッパーの変形(指が当たるところがポコッと伸びるなど)が一切なく、新品時と変わらないフォルムのまま、ただただ深い味わいを出している。マーキスの靴もそのヴィンテージシューズのように何十年経っても最高の輝きを放ち続けていてほしい、氏はただそれだけの思いで、毎晩深夜近くまで、工房で靴作りと格闘しているのだ。

 何十年後も魅力が褪せない氏の理想とする靴を作るためには、美しさだけを追求するのではなく、足にも靴にもストレスがかからない最高の履き心地も追求しなければならない。そのためには完成度をあらゆる角度から高める必要があると考えている。ラストメイキング、アッパーの縫製、ボトムシェイプ等、すべてのハーモニーがあってこそ、あのヴィンテージ靴のような雰囲気が生まれるからだ。

「キャリアを積み重ねていく中で、今は明確に作りたい靴が見えているんです。答えが見えているなら、そこへ近づいて形にしたい、今はただその思いでいっぱいです。だから、靴作りが楽しくて仕方がないんです」  

 技術もセンスも抜きん出て素晴らしいが、氏の最たる才能は、常に上を目指し続ける、誰にも負けない靴作りへの情熱を燃やし続けていることかもしれない。

川口氏が理想とする
40’sの英国ヴィンテージ靴
ロンドンの独立系ビスポークシューメーカー、MOYKOPF(モイコフ)の、1940年代頃に作られたもの。靴としての美しさ、作りの素晴らしさ、足にも靴にも優しい履き心地等、氏にとっての理想の1足だ。

マーキスが究極のヴィンテージ靴となり得る3つのポイント
Point 01
足のフィット感を高めて
美しいフォルムを極める

ラストメイキングにおいては美しいフォルムを生み出すことと、足が全体的に優しく包み込まれるようなフィッティングを重視している。底面の形状にこだわりながら、硬いところと柔らかいところのメリハリをつけるのが大切で、その工夫を随所に凝らしている。

Point 02
1点に向かって集約されていく
独自のマーキスラウンド

マーキスのラストの普遍的な美しさのひとつに、全方向からつま先の1点に向かってラインが集約されていく「マーキスラウンド」のトウフォルムがあげられる。言葉で言うのは簡単だが、この美しいラインを作るのは至難の業。ヤスリで削って水で濡らしてハンマーで叩いてを繰り返し、ラストに乗った芯の厚みぶんを整えラストの形に忠実にする。

Point 03
アッパーの縫製も4枚を
一度に縫って
履き心地のよさを向上

足の形状にもよるのだが、アッパーの縫製における革の切り替え部分は、アッパーからライニングまでの4枚を一度に縫うことで、家を支える支柱のような役割も果たさせる。フィッティングにおいてはしっかり支えるところと柔らかく包み込むところのメリハリをつけることを重要視しているという。単に柔らかければいいわけではないのだ。

川口昭司かわぐち しょうじ。1980年生まれ。2002年に渡英し、靴職業訓練学校で靴作りを学ぶ。2003年にビスポーク靴職人に弟子入り。フォスター&サン、ガジアーノ&ガ―リングなどの製作に従事し、2008年に帰国。2011年に自身のビスポークシューズブランド「マーキス シューメーカー」を始動。2017年、工房を銀座に移転。

マーキス シューメーカー東京都中央区銀座1-19-3 銀座ユリカビル8F
TEL. 03-6912-2013
info@marquess-shoemaker.com

本記事は2018年9月22日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 24

Contents

<本連載の過去記事は以下より>

コウジ エンドウ ボティエ:フランス仕込みのノルヴェジェーゼで世界を魅了

コルノ ブルゥ:完成されたベースラストから生まれる安心のビスポーク

タイ・シューメーカー:スラッとしていてグラマラス。女性のような色気のビスポーク

ユウキ・シラハマ ボティエ:日・伊・仏が融け合った現代的なビスポーク

セイジ・マッカーシー:日米ハーフの元エリートによる超絶クールなビスポーク靴

アン:ブロックから削り出すラストメイキングの奇才

イル クアドリフォリオ:個性革を自在に操る、革の魔術師

ヨウヘイ フクダ:ミリ単位の美意識が生む完璧なプロポーション

スピーゴラ:世界一美しいクロコダイルのビスポークシューズ

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