September 2015

Sex, Drugs and Moroccan Roll

背徳の街に集ったセレブリティたち

by nick foulkes

ジョン・ポール・ゲッティ・ジュニアと妻のタリサ。1968年撮影。

ストーンズも常連 タリサは、スウィンギング・ロンドンのセレブたちを大勢自宅に招いていた。クリストファー・ギブス、ローリング・ストーンズ、アニタ・パレンバーグ、マリアンヌ・フェイスフル、オジー・クラークという顔ぶれだ。来客たちは、この家に来てはドラッグを楽しんだ。しかもかなり大量にだ。彼女自身がゲスト全員に、マリファナ入りケーキを切り分けていたという。

 ゲッティ夫妻の財産は、まさに無限に近かった。そのおかげで、すべてを忘れられる媚薬をいくらでも買うことができた。キース・リチャーズによれば、ゲッティとタリサの夫妻は、「最高級の最も純度の高いアヘン」を持っていると、いつも自慢していたそうだ。

 ストーンズにモロッコを紹介したのは、イートン校出身の貴族で骨董商のギブスだった。彼はひどいドラッグ中毒者だったが、かなりの洒落者でもあり、フレアンツをロンドンで初めて穿いた男だといわれている。経営するチェルシーの骨董店に、タンジールからさまざまな珍品やカーペットを仕入れていた。

 1966年夏、彼はけんか中だったアニタ・パレンバーグとブライアン・ジョーンズをモロッコへ連れて行く。

「この旅行は、ブライアン・ジョーンズに、初めてエルモア・ジェームスを聴いたとき以来の最大の影響を与えました」とストーンズの伝記を書いたフィリップ・ノーマンは語る。

「複雑な彫刻が施されたパイプを使って、ハシシを楽しむことだけではありません。ガラスやシルバーのビーズが付いたカフタンやジャラバ、マント、ベストなどのファッションだけでもありません。ブライアンはモロッコへ来て、スピリチュアルでもあり俗っぽくもあるこの国の日常が、音楽とは切り離せないことに気づいたのです」

 ドラッグ所持で逮捕された有名なレッドランズ事件の後、ストーンズは騒動を避けるため、モロッコへ向かう。車には、「ポップアートが描かれたクッション、深紅のファーのラグ、ポルノ雑誌」といった旅の必需品が揃っていた。

結婚式の後で。1966年撮影。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 05
1 2 3 4 5 6 7 8 9