September 2015

Sex, Drugs and Moroccan Roll

背徳の街に集ったセレブリティたち

by nick foulkes

リズ・スミス、バーバラ・ウォルターズ、マーヴ・アデルソンとその他ゲストの面々。

第2幕はマラケシュで しかしながら、ヨーロッパ上流階級のモロッコ熱の第2 幕が繰り広げられたのは、タンジールの南西およそ600キロに位置する、王室と宗教の古代都市マラケシュだった。

 ジョン・ポール・ゲッティ・ジュニアと妻のタリサ・ポルは、マラケシュの“デラックスなヒッピー界”に君臨する司祭だった。2人は万華鏡のように多種多様な才能、博識を持っており、音楽や文学に傾倒していた。ほとんど知られていなかったモーツァルトのオペラ『牧人の王』のような楽曲や、クリストファー・ローグの詩のレコーディングにも携わっている。本が好きで、工芸品のような古い装丁にも入れ込んでいた。

 2人のモロッコでの隠れ家は、もともと19世紀に王族のために建てられたもので、部屋や間仕切り、秘密の出入り口、噴水などが迷路のように配置されていた。

「鮮やかなオレンジウッドと、ほのかに漂うローズ、ミント、スパイスの香り。木の葉の擦れ合う音や噴水の音、シュトラウス、ワグナー、ビートルズの音楽、カナリア色に輝く壁、真ちゅう製のテーブル、揺らめく炎の影。象眼細工の天井。光沢のあるアシッドグリーン、なす紺、藤色のタイル。キリスト教徒の奴隷が1 世紀前に作った刺繍入りクッション――このマラケシュの邸宅は五感を刺激する」と60年代末にヴォーグ誌は書き記している。

 ゲッティはここで、マリファナやハシシの香りに包まれながら我を忘れ、自分が世界一の金持ちの息子であるという悪夢を、つかの間忘れることができた(彼の父親であるジャン・ポール・ゲッティは、大富豪の石油王でありながら、来客用に公衆電話を設置するほど、非常にケチな男だったという)。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 05
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