September 2015

Sex, Drugs and Moroccan Roll

背徳の街に集ったセレブリティたち

by nick foulkes

ウィリアム・F・バックリー・ジュニア。

時代のミューズだったタリサ「ここでは、どれだけ素敵な格好をしても、変わった格好をしてもいいの」とタリサは言う。

「マラケシュでは誰もが美しく見えるから」

 たしかに、彼女は美しい。長いストレートのダークヘア、際立つ高い頬骨、シミひとつない額に引き寄せられたかのように弧を描く上品な眉、コール墨のアイラインがよく似合う彫りの深い目元など、彼女のルックスは時代のテイストに合っていた。

 ヴォーグ誌がマラケシュの豪邸の屋上で撮影した写真には、あり余るほどのクッションにもたれ掛かってくつろぐ彼女の姿がとらえられている。その背後に写るのは、花柄のドレッシングガウンのようなものに身を包み、ナトリウム色のサングラスをかけた愛妻家の夫。くぎづけと呼ぶのにふさわしいポーズで写っているが、間の抜けた印象は拭えない。

 今や一般的になった「ミューズ」という言葉も、本来はタリサとデザイナーのイヴ・サンローランの関係だけを示すものだった。サンローランもまた、60年代後半にマラケシュに家を買った1人だ。彼は後にこう語っている。

「タリサ・ゲッティと知り合って、私のビジョンは180度変わりました」

 サンローランの恋人でビジネスパートナーでもあるピエール・ベルジェによれば、イヴとタリサは、「同じ才能を持ち、人生の考え方が同じで、振る舞いも似通っている」とのことだ。

「それは、デカダンス。つまり、バーン=ジョーンズとロセッティを混ぜ合わせたものなんだ」と彼は言う。

「彼らにとって、自分以外の世界はすべて四角なのです」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 05
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