Photographer Elliott Erwitt -Interview-

写真家エリオット・アーウィット インタビュー
“伝説”が語ったこと、写したもの

April 2019

text yoshimi hasegawa photography ©Elliott Erwitt / Magnum Photos

アーウィットも参加する“HOME”プロジェクトとは?
マグナムの設立理念であるヒューマニズムの追求。その源泉である「HOME」をテーマに、16 名のマグナムの写真家が「HOME」が意味するものを個々に表現した富士フイルムとの共同プロジェクト。2018 年3月より世界7都市を巡回する写真展を開催。記念写真集も出版。
www.home-magnum.com

 最後に読者へのアドバイスは?

「写真を撮る才能を伸ばすにはとにかく写真を撮ること。たくさん撮る必要はない。興味深いテーマでよい写真を撮ることだ。だって今は誰もがフォトグラファーなんだから」と笑った。「実のところ、アドバイスは好きじゃない。誰も興味ないだろう? それより、君はフォトグラファー? 写真は好きなのかな?使うのはどんなカメラ? スペシャリティは?」

 矢つぎ早にたずねる彼の目には時間が足りないと嘆く巨匠の苦悩はない。写真を撮る時の純粋なきらめき、対象と向き合う真摯で純粋な眼差し、写真を撮る者なら誰もが感じる、その瞬間を捉えたいとただひたすら願う高揚がある。

 突然、ここで私は気がついた。機内で私の胸に去来したニューヨークの摩天楼、あれはエリオット・アーウィットの写真のイメージだったのだ。

 美しい写真は世の中に数多ある。しかし心に残る写真は限られている。エリオット・アーウィットの写真は美しいだけではない。一度見たら忘れることはない、心の奥の感情を揺さぶる何かが映し出されている。そこを訪れたことがなくとも、映し出された情景、その写真の背後に潜む感情が喚起され、繋がる。その瞬間、それはただの美しい写真ではなくなる。そこにあるのは人間の普遍的な感情であり、その写真は人生の一部となる。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 26
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