December 2022

SIGMA AIZU FACTORY VISIT by MARK CHO

シグマ会津工場探訪記:日本が誇る世界の「眼」

日本のクラフツマンシップの最高峰を求め、世界のメンズウェア業界を牽引するマーク・チョー氏が、光学機器メーカー、シグマの会津工場を訪問。CEO山木和人氏との対話から、その成功と独創性の理由を解き明かす。
text yoshimi hasegawa
photography daisuke akita

レンズ製造にとって最も重要な工程のひとつがレンズコーティングだ。フレームにレンズをセットし、窯に入れてコーティング用ターゲット剤を蒸着させる。窯の中は真空なので均一に反射防止膜が広がる。片面終了後、外して洗い、逆側も行う。検査はすべて人の眼で行われている。

「日本のクラフツマンシップは、もっと世界に評価されるべきだと思います」

 こう語るのはアーモリーの共同経営者マーク・チョー氏だ。メンズウェアに加え、レンズ、カメラにも造詣が深く、識者として知られるチョー氏は(株)シグマ(以下、シグマ)を高く評価し、同社の会津工場を訪れた。チョー氏を迎えたのはシグマCEOの山木和人氏である。

 シグマは1961年、和人氏の父である山木道広氏により世田谷区に創業された。現在は本社を神奈川県川崎市麻生区、自社の会津工場を福島県磐梯町に構え、従業員は1700名を超える。

 会津工場は独立系レンズメーカーとして最大規模であり、交換レンズ、デジタルカメラ、周辺機器に至るまで完全内製化。ほぼ完全なる「Made in Aizu」を実現している。

 国内で製造を行う一方、海外を主要市場とし、輸出比率は全生産量の8割に及ぶ。世界に8つの小会社、70以上の国、地域に販売網を展開している。2021年8月期の年商は429億488万円、前年338億1527万円と比して約27%増となった。

 創業当時、後発のレンズメーカーだった同社だが、現在は交換レンズのみならずカメラ、ソフトウェア開発まで含む、世界的な総合光学機器製造販売企業だ。特にチョー氏が注目するのは、競合他社とは異なる、独創的な写真哲学に基づいた製品開発と高いクオリティだ。


1973年、創業者山木道広氏は「会津を世界に誇る光学製造の拠点にしたい」という大志のもと、自社工場を福島県会津地方の磐梯町に構えた。会津工場は磐梯山に抱かれた豊かな自然の中に存在している。名水100選にも選ばれた不純物の少ない水と空気、冬季は豪雪で閉ざされるこの厳寒の地方で育まれた会津人の勤勉さと忍耐強さがシグマ製品の高い品質と信頼性を生んでいる。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 48
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