La Vida Bella

秘密の楽園、マルベーリャ

February 2018

text nick foulkes

マルベーリャ・クラブのスイミングプール(1976年)

プリンスの心を動かした驚くべきアイデア マルベーリャ・クラブにまつわる物語の序章は、プリンス、プレイボーイ、そして木炭燃焼式のロールス・ロイスが登場するおとぎ話のようだ。

 そのプリンスとは、後にマルベーリャ・クラブを創設することとなるアルフォンソの父親、マックス・フォン・ホーエンローエ。そしてプレイボーイは、イバンレイ侯爵であったいとこのリカルド・ソリアーノだ。命知らずのモーターボートレーサー、スポーツマン、発明家としても活躍していたソリアーノは、田舎町マルベーリャのすぐそばに釣り用のロッジを建てていた(今日、マルベーリャの目抜き通りは彼の名で呼ばれている)。彼が所有するこの場所を訪れるため、プリンス・マックスは、1946年、木炭燃焼式のロールス・ロイス・ファントムで、南へ向かって出発したのだった。

 暑さと砂ぼこりに耐えつつ到着してみると、ソリアーノは釣りに出かけていた。プリンス・マックスはロールス・ロイスを駐車し、海岸まで広がる松林の木陰で木漏れ日を浴びながら食事をすると、そこでソリアーノを待った。ようやくソリアーノに会えたプリンスは、このプレイボーイから“マドリード近郊の大邸宅で冬の間にかかる暖房費があれば、地中海に家を買うことができる”という、とっておきの情報を得ることとなる。

 この発想に心を動かされたプリンス・マックスは、すぐに息子のアルフォンソをマルベーリャへ向かわせた。彼は、魅力と洗練されたマナーの持ち主で、さまざまな言語を操り、射撃に秀で、スキーやテニスをたしなむなど、第二次世界大戦後に失われていた生き方を実践するための素養を身につけていた。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 11
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