Wednesday, July 20th, 2016

DRAPE EXPECTATIONS
時代は“ドレープ”

広い裾幅とゆったりしたサイズのトラウザーズの時代が、
今こそ幕を開ける。軽くプリーツを施せば、
現代の男らしさにふさわしい堂々たる美学の誕生だ。
text aleksandar cvetkovic photography simon lipman fashion direction jo grzeszczuk

 フロント部にプリーツが施されておらず、ローライズな細身のトラウザーズが20年ほど流行した結果、ファッション業界は再び、幅広のレッグ、サスペンダー用のデザイン、ハイライズなどでさまざまな試みを行っている。現に、2016年春夏のメンズコレクションは、現代的で大胆で、最高に粋なドレープカットのトラウザーズであふれていた。
 ドルチェ&ガッバーナのアルタサルトリアは色気たっぷりのスーツを発表し、ラルフ ローレンのパープル レーベルは深いプリーツを施したプレッピーなギャバジン製アイテムを披露した。高級メンズウェア界のデザイナーたちは、たっぷりとしたサイズやプリーツに対し、こぞって新たな情熱を燃やしているようだ。
 ワイドトラウザーズは古典的な仕立てのトラウザーズとは真逆の存在だ。緩やかに流れるようなデザインは、むしろ女性的とさえ言えるかもしれない。スマートでもなければ、洗練されてもいない。ブカブカで形の定まらない脚部を完璧にプレスし、新品同様に保つのは容易ではない。言い換えれば、ワイドトラウザーズは未来志向なのだ。これは、新しい男らしさを提案するもの。衣服の形をどうコントロールすれば魅力的に見えるのかを心得ている男性の服なのである。
 ただし、たっぷりしたトラウザーズをはくとき、形がはっきりしないトップスと組み合わせるのはご法度。幅広のトラウザーズは、単に“だぶだぶ”なのではないからだ。ウエストにフィットするよう慎重に裁断されているし、腰回りで自然にドレープし、中身を隠すのではなく強調するようデザインされているのだ。
 高級メンズウェアのデザイナーたちが、流れるような魅惑的なボトムスを、フィット感のあるジャケットと組み合わせてきたのは、これが理由かもしれない。トラウザーズの滑らかなラインと対比させるのが狙いなのだろう。要するに、筋肉の力強さと流れるような優美さを併存させるのも、現代的な男らしさや性的魅力を伝える手段なのである。
 メンズウェアの巨匠たちによって編み出されたこういったデザインは、ワイドトラウザーズを新たな境地へ導いている。つまり、我らはちょっとした悟りを得たのだ。THE RAKEのメンバーは一様に、ぴっちりとしたくるぶし丈のパンツの時代は終わったと考えるようになった。たっぷりした仕立てこそ、トラウザーズの未来だ。これからは、幅広のレッグ、深いプリーツ、動きやすいゆとり、そして緩やかさの時代なのだ。
 これはひとつの意見にすぎないが、新たなトラウザーズを手にするときにでも思い出してみてほしい。粋な紳士にとって、トラウザーズの幅を広げ、ファッションの幅を広げるのも悪くない選択だということを。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 11

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