August 2021

A DESIGN FOR LIFE: VITALE BARBERIS CANONICO

世界で最も紳士を生む服地

350年を超える歴史を誇るイタリアのヴィターレ・バルベリス・カノニコ社(VBC)の服地に世界中の一流テーラーたちが注目し、その品質の高さに酔いしれている。
プロの目から見たこれほどの評価の高さは、一体どこから来ているのだろうか?
photography luke carby
text yuko fujita

 昨今、テーラードの服地の世界はヴィターレ・バルベリス・カノニコ一色だ。ナポリ中のサルトがやってくるナポリの生地卸商カッチョッポリの店内にはバルベリスの反物がズラリと並んでおり、ミラノのA.カラチェニの服地棚には、あらゆるミルの中でVBCの服地だけが占める一角がある。海を渡って英サヴィル・ロウの一流テーラーを見渡しても、VBCの人気はうなぎ上りだ。

 一着に何十時間もかけて10年20年着られる服を仕立てるテーラーたちは、服地に対して並々ならぬ愛情を抱いている。そんな彼らの多くが今最も注目している服地こそがVBCなのだ。それほどまでにVBCの服地は、今世界中で高評価を獲得している。

 VBCの本社工場はイタリア北部ビエラのプラトリヴェーロにある。会社の歴史は1663年まで遡り、今日まで13代にわたる一族経営で成長させてきた。約400名の従業員を抱え、自社でコーミング、紡績、染色、製織、仕上げの全工程を行っている。年間生地生産量は900万m、売上高は1億3700万ユーロを誇る。この圧倒的な数字は、最新設備・ロボットを導入して図った徹底したオートメーション化の賜物だ。その中で服地のクオリティを高めるシステムがきっちり構築されているのも、ここの強みである。

 自然環境に優しくあることへの取り組みにも熱心で、排水・排煙の処理設備にも巨額を投資している。浄化処理済みの貯水槽内は金魚が泳げるほどクリーンで、毎日使用する100万リットルの水は、100%浄化してもとのモッリエ川に戻している。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 11
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