Exclusive Interview: JOSH BROLIN
HOPE FLOATS

俳優ジョシュ・ブローリン:宙を舞う希望

June 2021

鍛え上げられたその肉体でマーベル史上最凶の敵・サノスを演じたジョシュ・ブローリン。
悪夢のような2020年を経て、私たちが目覚めるための先導役を果たせる人物がいるとすれば、それは彼に違いない。
text tom chamberlin
photography kathryn boyd brolin

Josh Brolin / ジョシュ・ブローリン1968年生まれ。1985年のヒット映画『グーニーズ』でデビュー。その後テレビや舞台でも活躍。『ミルク』(2008年)でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。マーベル作品では最凶の敵・サノス役と、デッドプールの相棒ケーブル役の2役を演じた。ちなみに父親は俳優のジェームズ・ブローリンで、彼の再婚相手の女優バーブラ・ストライサンドはジョシュにとって義母にあたる。

 その物語はこんな風に展開する。歩き始めたばかりの息子の身体が、なぜか宙に浮くことに気がついた父親。初めは素晴らしい能力だと思っていたが、周りの人々から好奇の目で見られると考えるようになる。そこで外に出るときは、石の入ったリュックを重しとして息子に背負わせ、人々の嘲笑や批判から守ろうとした。しかし、息子は自分の動きを妨げる重みから逃れて、公園で思う存分宙に浮かんで楽しもうとする。焦った父親は“普通”の子としてふるまわない息子を大声で注意し、息子は孤独な涙を流す―。

 ピクサーの短編作品『宙を舞う』(2019年)のあらすじがジョシュ・ブローリンから語られて、私もブローリンも涙し始めたのは、1時間の予定だったインタビューが3時間に及んだ頃のことだ。

 トーク番組で活気とアドリブに満ちた話しぶりを披露するブローリンへのインタビュー取材が、どんな方向へも進み得ることは予想していたが、まさか私まで涙する展開になるとは。ブローリンとの会話はまるで旅のようで、この種のインタビューでよくあるプロセスとは大きく異なる。彼は真実を話す、極めて自分に誠実で正直な人間だ。人間のあり様を見極めることを重視する彼は、自身の記事のためのこのインタビューにおいても、インタビュアーの私という人間のあり様をも探究し、前述の短編映画の話題を出したのだ。

10代でギャングの一員に ブローリンの幼少期は平凡さとは無縁だった。彼が育ったのは、カリフォルニア州パソロブレス。現在はワインの名産地として知られるが、当時は畜産が盛んだった。そこには彼の生みの母の持つ、230エーカーにも及ぶ牧場があり、彼は幼い頃からそこで働いていた。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 39
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