July 2020

Exclusive Interview: CHRISTOPH WALTZ
LORD OF THE DANCE

悪役の天才:俳優クリストフ・ヴァルツ

俳優であり美食家であり辛辣な思想家でもあるクリストフ・ヴァルツ。
彼がブレイクを果たしたのは50代に入ってからだが、今やハリウッドの頂点に君臨するまでになった。
見事な演技力を見せる彼の世界観は独特である。
text nick scott
photography brian bowen smith
fashion direction grace gilfeather

Christoph Waltz / クリストフ・ヴァルツ1956年、ウィーン生まれ。ウィーンとニューヨークで演劇を学んだ後、主にテレビを中心に活躍。2009年、クエンティン・タランティーノ監督作『イングロリアス・バスターズ』で悪役ハンス・ランダ大佐を怪演し、各映画賞を総なめにした。その3年後、同じくタランティーノ監督作『ジャンゴ 繋がれざる者』で2度目のオスカーを獲得。2014年、ハリウッド進出からわずか5年の快挙でハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに名を残す。

スーツ Ermenegildo Zegna(ゼニア カスタマーサービス Tel.03-5114-5300)
シャツ、タイ both by Emma Willis
チーフ New & Lingwood
ソックス London Sock Company
シューズ George Cleverley
時計「L.U.C 1937」自動巻き、SSケース、42mm Chopard(ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922)

 オーソン・ウェルズが、映画『黒ばら』(1950年)の撮影で、主人公のコートの裏地がミンクファーであることにこだわったのはあまりにも有名な話である。また、ジョージ・クルーニーが『ゼロ・グラビティ』(2013年)で、撮影地にカリフォルニアの一部を再現させた話も有名だ。

 そんなこともあり、アカデミー賞を2度も受賞し、ワインの知識が豊富な俳優が、今回の取材に際してポイヤックのシャトー・ラフィット・ロートシルト 2010年を所望したことに私たちは驚かなかった。だがインタビュー当日、彼は開口一番にこう言った。

「『飲み物や食べ物など何かリクエストはありますか』と聞かれたので、ジョークのつもりで言ったのですが……。本当にこんな素晴らしいワインを用意してくれるなんて、正直少し戸惑っていますが、誇らしい気分でもあります(笑)」

本物しか味わう価値はない クリストフ・ヴァルツ、御年63歳。彼は生粋の美食家でもある。信奉しているのは、デイヴィッド・ミッチェルが著書『Thinking About It Only Makes It Worse(原題)』で言及した「valve decision」―良いものを一度でも経験したらその感覚を引き戻すことはできない―という概念だ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 34
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