September 2023

Exclusive Interview: CARY ELWES

俳優:ケイリー・エルウィズ 衰えを知らない意欲と情熱

1980年代から数々のヒット作に出演し続けているケイリー・エルウィズ。ワーカホリックなこのイギリス人俳優が、運命と幸運、そしてガイ・リッチー監督の最新作について語る。
text tom chamberlin
photography kurt iswarienko
styling alison edmond

Cary Elwes / ケイリー・エルウィズ1962年、ロンドン生まれ。父親は肖像画家、母親はインテリアデザイナーという芸術一家に生まれる。イングランドの名門パブリックスクールであるハーロー校を卒業後、ニューヨークの演劇学校で学び、ロンドンに戻って舞台で活躍する。1984年の『アナザー・カントリー』でスクリーンデビュー。『デイズ・オブ・サンダー』(1990年)、『ドラキュラ』(1992年)、『ツイスター』(1996年)、『ライアー ライアー』(1997年)、『ソウ』(2004年)など幅広い作品に出演。印象的な脇役で個性を打ち出している。

カーディガン、シャツ、トラウザーズ すべて参考商品 Brunello Cucinelli
ネッカチーフ property of stylist
シューズ 参考商品 John Lobb

 この記事を真っ当に進めるため、インタビューが実現した経緯を説明しよう。そもそもの発端は数カ月前でも数年前でもない。50年近く昔の1975年、ロンドンのボンドストリートに「Figurehead」というサロンが開店したときまで遡る。

 当時のロンドンは美容シーンの全盛期で、リッチ・バーンズやヴィダル・サスーン、ジョージ・ブリットネルといった人々がロックスターのような風格をヘアメイクで表現し、ファッション誌への関心を高めていた。このうち、ブリットネルはドミニク・エルウィズという画家と共同で美容サロンを開いた。それが前述の「Figurehead」だ。オープニングレセプションには、重要なジャーナリストが多数招待された。その中にはVogue誌の美容編集アシスタントだったスーザン・フェイヒーが、また頭数合わせのために集められたゲストの中には騎兵隊の元幹部で気さくな男、ニック・チェンバレンが含まれていた。私、トム・チェンバレンが何を言いたいかはおわかりだろう……。スーザンとニックはそのパーティで初めて出会い、会話が弾み、その後ディナーに出かける。そして1987年、私がこの世に生を享けることとなる──。

 時は流れて2023年。私は今回の記事のため、ドミニク・エルウィズの息子であるケイリー・エルウィズとZoomで会うことになる。数十年前に彼の父がサロンを開かなければ決して実現することのなかった素晴らしい出会いなのである。

憧れの俳優に偶然出会って ケイリー・エルウィズは、これまでの長い年月を膨大な量の仕事で埋めてきた。演技への情熱の種が蒔かれたのはまだ子どもの頃だったと彼は語る。

「ひとり親の家庭で育ったから、テレビが友達代わりだった。それでいろんな作品を見ているうちに、役者という仕事への興味が湧いたんだ。演技を学ぶことはとても楽しかったから、かなり早いうちから自分の天職はこれだと思えたんだよ」

 イギリス人俳優の多くと同様に、エルウィズも舞台演劇を基礎として学んだ。

「僕はローレンス・オリヴィエやジョン・ギールグッドのような演劇の巨匠たちの演技を学んだ時代の人間だよ。好きな俳優といえばラルフ・リチャードソンやリチャード・バートン、ピーター・オトゥールとか……みんな研究したよ」

 ただし、彼の情熱はイギリス人舞台俳優に限られるものではなかった。

「アメリカ人俳優の演技も学びたかった。大好きな彼らの多くがニューヨークで学んでいたから、僕もリー・ストラスバーグ演劇学校に行ったんだ」

 アメリカで勉強を始めた彼だったが、最終的にリー・ストラスバーグ演劇学校を目指すきっかけとなったのは、大好きなアル・パチーノとの出会いだった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 54

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