Tuesday, June 30th, 2020

FIRE in his BELLY

怒りのビリー・ジョエル

ビリー・ジョエルの音楽は、詞も曲もジャンルの垣根を超えていて興味深い。
彼はどんな人間なのか?
偉大なエンターテイナーなのか、
それとも単にサウス・ブロンクスの男が成功しただけなのか?
text james medd

Billy Joel / ビリー・ジョエル1949年ニューヨーク州サウス・ブロンクス生まれ。4歳からクラシック・ピアノを始める。ザ・ハッスルズ、アッティラのメンバーを経て1971年にソロデビュー。セカンドアルバム『ピアノ・マン』でブレイク。同タイトルの曲名が彼のニックネームとなる。代表曲は『アップタウン・ガール』『素顔のままで』『オネスティ』など。上の写真は1983年、34歳の時のもの。

 ビリー・ジョエルについて知っている人も多いと思う。だが本当の彼についてはあまり知られていない。それを証明する簡単な方法がある。YouTubeで“Attila(アッティラ)”と検索してみてほしい。食肉解体場の中で鎧を着て立つふたりの長髪の男のジャケット写真とともに、ディストーションをかけたオルガンのヘビメタを聴くことができる。このオルガニストこそ、ソロデビュー前のビリー・ジョエルだ。

 多くのミュージシャンは忘れたい過去を持っているものだが、これがビリーの黒歴史である。鳴かず飛ばずのバンドを経て、彼はドラマーとふたりでアッティラを結成した。しかしその活動はまったく時代にそぐわなかった。事実、ビリー・ジョエルはいつも時代に即していない。それはアーティストにとって良い方向にも悪い方向にも働くのだが。

『ピアノ・マン』や『キャプテン・ジャック』といった彼を有名にした曲の詞は、ブロードウェイのショーを切り取ったようなストーリー仕立てだ。『素顔のままで』に代表される、彼を長い間ジョークの対象とした大げさなバラードは、かつてシナトラが歌った往年のアメリカン・スタンダードや70年代ソフトロックを踏襲している。

 また、『若死にするのは善人だけ』のようにスプリングスティーン的な領域に進出した曲や、『ロックンロールが最高さ』や『アップタウン・ガール』のようにロックンロールやドゥーワップを取り入れた曲、『ハートにファイア』のように、80年代オルタナティヴ・ロックのスタイルの曲も発表した。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 34
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