June 2019
A super sad true love story
悲劇の写真家、ボブ・カルロス・クラーク

『Infanta Electronica(エレクトロニカ王女)』(2004年)
© THE ESTATE OF BOB CARLOS CLARKE / THE LITTLE BLACK GALLERY
クリエイターとしてマンネリを忌み嫌う反面、秩序とコントロールを求めて必死になった。安易な商品化をよしとしない、誇り高き芸術家でありながら、自らの老いを受け入れられない、未熟な男でもあった。
魅力的な女性にすぐ夢中になるくせに、妻なしでは生きられなかった。彼の写真は女性を美しく輝かせたが、フェミニストには目の敵にされた。作品は肉体的快楽への衝動を、一貫して表現していた。
情け深い人柄に似合わぬ、研ぎ澄まされた刃物のような冷酷さを持っていた。明るいムードメーカーであったにもかかわらず、「神格化されるためには、若くして死ぬことが不可欠だ」と考えていた。
身を焼くような渇望感 カルロス・クラークは、自分にここまで女性を撮りたいと思わせるものは何なのかと自問した。そしてその答えが、自らの生い立ちにあるということを認めていた。彼は1950年に、アイルランド南部のコークで生まれた。父チャールズ・カルロス・クラークは、2度の世界大戦で戦った元少佐だった。母マイラは労働者階級出身で、チャールズより30歳年下の3番目の妻だった。