A SHOT AT THE BIG TIME
貴族のための最後のスポーツ
May 2019
遊猟旅行中のウィンザー公(1936年)。ソフトハットとツイードのジャケットに身を包んでいる。
貴族と聞くとどんなスポーツを連想するだろう? ひょっとしたらキツネ狩り(ハンティング)だろうか?
ただ、2004年にキツネ狩り禁止法が成立したため、近年は状況が変わった。今や、馬に乗った参加者たちが追いかけるのは、四輪バギーがつけた臭いの跡だ。キツネにとっては前よりフェアなやり方だが、赤いバギーがエンジン音を響かせる様子は、昔ほどロマンチックではない。
ポロはどうだろう。確かにウィリアム王子もヘンリー王子もポロをするが、怪しげな新興実業家やガス王もプレイしている。以前ならクロッケーもよい答えだっただろう。だがそれも、ベッカム夫妻がオックスフォードシャーの自宅に、クロッケー場を造るまでの話だった。
よって見たところ、上流階級の道楽として残っているスポーツはたったひとつ。銃を用いた遊猟(シューティング)だ。もしあなたが公爵であれば、まず間違いなく今でも広大かつ歴史ある遊猟地を所有しているはずだ。デヴォンにキジ、サセックスにヤマウズラ、ヨークシャーにライチョウの猟場という具合に。
銃を用いた狩り出し猟のための英国最古の遊猟地は、ノーフォーク北部のホルカムにある。実は所有者は公爵ではなく伯爵(レスター伯)なのだが、ここは今でも英国屈指の遊猟地だ。並外れた猟鳥、丹念に手入れされた素晴らしい自然、そして伝統的な姿勢を守っている。
ホルカムの勢子は、クックハットと呼ばれるボーラーハットを現在も着用している。クックハットの起源は枝から勢子の頭部を守るために1849年に注文され、ロック&コーのチーフハッターであったトマス・ボーラーが仕立てた帽子である。